答 申 書 |
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伊那市・高遠町・長谷村合併協議会 新 市 名 称 検 討 委 員 |
私たち委員は10月18日と29日に会合を持ち、市川健夫氏を座長に互選し、新設合併による新市名称案の検討を行うための基本方針として、以下の点を確認し合いました。
歴史的所産である地名を失わないように配慮する。
名称案は一つにまとめる。
ひらがな・カタカナ・横文字表記の名称や合成地名は避ける。
歴史的・広域的・将来的の三つの見地から検討する。
以上に基づき率直に意見を交換し合い、その結果を下記のようにまとめましたので本日ここに答申いたします。
記
1 | 新市の名称案 「伊那市」 | ||
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2 | 選定の理由 | ||
(1) | 「伊那」「高遠」「長谷」はそれぞれ下記のような歴史と特色を持つが、「伊那」は古代に設置された「伊那郡」以来の長い歴史を持つ広域的な名称であること | ||
(ア) | 「伊那」について | ||
「伊那郡」は古代律令制下で信濃国に置かれた10郡の一つであり、天平10年(西暦738年、奈良時代)の史料にその名が見えている。古代の郡は行政区画であった。だが、以後の律令制の形骸化により中世までには行政区画の役目を終えた。 しかし、「伊那郡」という地域名称は天竜川流域のいわゆる伊那谷を総称する名称として、近世以後も明治の初めまで使用され続けた。そのため郡名が伊那街道のように広域にわたるものの名称に付けられるようになった。 現在も伊那山地・伊那盆地のような使われ方をしているが、これは昭和23年、国の地名表記委員会(建設省国土地理院と文部省で構成)が規定した呼称である。 | |||
(イ) | 「高遠」について | ||
「高遠」は中世から文献に名を現し、軍事上、交通上の要衝として知られ、戦国末期の高遠城の戦いは名高い。近世においては高遠藩の所在地として、伊那郡北部と筑摩郡とに散在する領地支配の拠点として重きをなして来た。この時代、現伊那市域も西箕輪・手良・福島以外は高遠領であった。 明治以降は郡域の中心を伊那に譲ったが歴史の所産である史跡・文化財が豊かであり、藩校進徳館で学んだ者などから各界で力を発揮した人材を多く輩出し、北の松代と並び信州教育の発祥の地としても知られている。 高遠城址が桜の名所として全国的に有名なことも特筆すべきで、観光面での存在感は非常に大きい。 | |||
(ウ) | 「長谷」について | ||
「長谷」の名は明治初年時に現村域の大部分で形成した村の名称として使用された由緒に基づき、昭和の美和・伊那里両村合併時に付されたものである。 この地域は中世以前には「非持」「黒河内」の名が文献に見え、近世では入野谷郷として知られ、南北朝期の史跡と伝承に富み、知名度の高い民話・民謡・芸能の伝えられる文化の香り豊かな地である。 近年はこれらとともに南アルプス国立公園などのすぐれた自然環境が注目され、その恩恵に浴そうとこの地を訪れる人がたいへん多くなっている。 | |||
(2) | 「伊那」は明治初期設置の「上伊那郡」の中心に位置する地方自治体の名称であり続けたこと | ||
明治12年(1879)に長野県下に新行政区画の16郡の一つとして「上伊那郡」が設置された際、明治7年に西伊那部村などの合併により成立していた伊那村(現伊那市大字伊那)に上伊那郡役所が置かれた。 これを機にこの地の発展が始まり、明治22年の町村制施行時には広域の伊那村(現大字伊那・伊那部・福島)を形成し、同30年には伊那町となり郡域の中心自治体として求心力を急速に強めた。 これが基盤となって昭和の大合併では7町村による伊那市となり、上伊那の中核にとどまらず、南信地域の有力都市として「伊那」の名はより存在感を増して来ている。 | |||
(3) | 「伊那」は現在多くの施設や組織等に冠せられる名称として幅広く使用されていること | ||
上記(2)のような経緯から上伊那や南信地域を所轄する官公署等の名称に冠せられることが多く、伊那税務署・伊那警察署・伊那保健所・伊那教育事務所等その事例は枚挙にいとまがないほどである。 交通面の例では伊那インターチェンジがあげられるが、権兵衛峠道路の開通によりさらにその重要性と知名度を増すことが予想される。無形文化財の面では「伊那節」も全国に知られている。 | |||
3 | 付帯意見 〜「高遠」「長谷」を尊重し、存在感を輝かせるように図ること〜 | ||
上記のように貴重な名称である「高遠」「長谷」は新市において、それを尊重し存在感を輝かせるように図ることがきわめて重要である。その具体策として、「伊那市高遠町」「伊那市長谷村」または「伊那市高遠」「伊那市長谷」等のようにしたらとの話し合いも行われた。 だが、それは私たち委員の検討事項として答申する対象ではない。そこで、市域内自治のあり方の検討などの然る可き場で、よりよい対応策を講じることを希望して、これを付帯意見とする。 | |||
平成16年11月2日 | ||
新市名称検討委員 | ||
市 川 健 夫 | ||
伊 藤 一 夫 | ||
春 日 博 人 | ||
松 田 泰 俊 | ||
矢 澤 章 一 | ||
伊那市・高遠町・長谷村合併協議会 会長 小 坂 樫 男 殿 |