むかしたんぼ

　四月の伊那市長選挙におきまして、伊那市長に選任されました白鳥孝でございます。「対話」と「現場主義」をモットーに働いてまいりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
　数年前に私の住んでいる、西箕輪中条地区で、お年寄りのみなさんの力を借りて「むかしたんば」という取り組みをしました。これは、今の子どもたちが、中条のような村部であっても、田植えや稲刈りを経験したことがなく、ましてや裸足で田んぼに入ったことがないことから、公民館活動で「昔のたんばの経験を一年を通じてやってみよう」と取り組んだのです。とはいえ企画した私たちに、歯間づくりや籾まきを知っているものはいません。田の草とりの除草機もありません。秋の収穫では、は革も手配しなければなりません。そこで、経験豊富なお年寄りのみなさんに指導をお願いすることになりました。すると　「昔は、田植えのときには、竹の子とほたるいかの煮付けを食べた」、「黄な粉むすびも懐かしい」と、おじいさんたちの話は尽きません。そのうちに、おばあさんたちにも登場してもらい、お母さんたちに田植えの時や秋の収穫祭の味覚を教えてもらうことになりました。「むかしたんば」は大成功でした。たんばの土手に座って、みんなで黄な粉むすびを食べました。田の草とりも子供たち総出で行いました。嬉しい稲刈りも、小学生、おじいさん、おばあさん、保護者も全員参加です。一年かけてつくったもち米で餅つきをして、秋の収穫を喜びました。
　この「むかしたんば」では、お年寄りの知恵と経験にみんなが瞳目しました。子供たちにしてみるとおじいちゃん、おばあちゃんはスーパースターです。いつも威張っているお父さんやお母さんが、お年寄りの言うことを聞きながら、かいがいしく働くのですから。
　私はこのように伊那市の行政のなかで、保育園や学校、地域など、あらゆるところ先輩方の経験を伝えていただき、知恵を伝承してほしいと願っています。そのうちにお願いに伺いますのでよろしくお願します。

　白鳥　孝

寄稿　むかしたんぼ.伊那市高連だより.伊那市高齢者クラブ連合会.平成22年8月 1頁