- 中山コーディネーター
- このシンポジウムのコーディネーターをつとめさせていただきます、中山彰博と申します。よろしくお願いいたします。
今日は、看板にありますように、「未来を語る」という場ですので、現在の市町村にとらわれず、これからみんなで作る「新しい市」について、十分に語っていただければと思います。
|
 |
新しいまちの将来像 |
- 中山コーディネーター
- まず最初は宮下市蔵長谷村長さんに、「新しいまちの将来像」についてのお考えをお聞きします。
- 宮下長谷村長
- 3市町村が合併して創る新しいまちは、「新市の将来像」にもあるように「美しいまち」を目指しています。地域内分権や自然環境保護、行政改革推進、住民との協働を進めていきたい。合併すると人口7万人余となり、県内でもリーダーシップをとって歩んでいくことができる市が誕生します。将来の発展性を考えると、合併して3市町村の良いところを伸ばしていくことが大切だと思います。
- 中山コーディネーター
- では、長谷村民としての視点から、伊那市や高遠町のすばらしい点や、この3つの市町村が一つの新しい市になったときにどんなよい点があると思われるか、羽生庄次委員さんにお聞きしたいと思います。
- 羽生委員
- 伊那市は上伊那最大の行政体、高遠町は歴史・文化の薫るまちです。この3市町村が一緒になれば良い市ができると思います。また、行政の規模が大きくなり体力がつくことで行政改革や各種支援策を積極的に進めていくことができるということもメリットとして考えられます。
- 中山コーディネーター
3市町村が合併することについて、住民の皆さんが不安に思うことに「行政区が広くなることにより、きめ細やかなサービスがなされなくなるのではないか」「事業や施設が中心部に集中し、周辺部が寂れてしまうのではないか」「行政区が広くなることにより、地域の課題の解決が難しくなるのではないか」などということが挙げられています。
確かに、合併したことにより、自分の住んでいる地域が、不便になっていくようなことがあっては、合併する意味がないとも思えます。
住民の皆さんのこのような不安を解消するために、「地域内分権」という考え方があります。新しい市においては、住民が主役の地域分権型のまちづくりも重要施策の一つに掲げていますが、この「地域内分権」について、宮下村長さんはどのようにお考えでしょうか。
- 宮下長谷村長
- 「地域内分権」は今回の合併の特色の一つです。現在の高遠町と長谷村の区域には合併特例による地域自治区を設置し、伊那市には一般制度による地域自治区を設置します。地域自治区には地域協議会が設置され、ここで地域の様々な事項について議論されます。長谷村役場は長谷総合支所となりますが、住民の皆さんが困らないだけの機能は残します。
高齢化問題など問題は山積みですが、できるだけ地域で解決できるように改革すべき部分は改革をし、よりよい地域作りを進めていく。地域内分権はそのための仕組みです。
- 中山コーディネーター
- 新しくつくる市は、上伊那の中核都市としてばかりではなく、南信の中核都市を目指しているということですが、南信の中核都市として、どうまちづくりを進めていくのか、小坂樫男伊那市長さんにお聞きします。
- 小坂伊那市長
- これからの自治体には、ある程度の規模が必要です。3市町村が合併すると南信では飯田市に続く規模を持つ市になります。合併の究極の目的はその地域の自立にあると思います。合併することで南信の中核都市として羽ばたいていけたらと考えています。
- 中山コーディネーター
- 今までそれぞれに歴史を重ねてきた3つの市町村が一つになるわけですから、地域の個性や独自の文化が失われてしまうのではないかと心配する声もあります。
これは、「自分たちは、地域の歴史、文化に誇りを持っているんだ」という、住民のみなさんの、高い意識の現れだと思います。
合併しても、地域の個性を失わない魅力のあるまちづくりが求められると思います。新しい市において、いままでの歴史、文化を活かしながら、どう、まちづくりを進めていくのか、伊東義人高遠町長さんにお聞きします。
- 伊東高遠町長
- 高遠町では明治8年から高遠城址に桜を植え始め、今では1,500本という数になりました。また、進徳館教育の影響から、伝統的に人材育成が進められてきました。現在は保科正之公の大河ドラマ化実現に向けて力を入れています。こうした活動は、大きな市になればもっと大きな力で進めていくことができるようになると考えています。
|
新市まちづくり計画 |
- 中山コーディネーター
- 実際に新しい市を作るに当たっては、より具体的な計画や、指針が必要になります。伊那市、高遠町、長谷村合併協議会では、新しい市の姿を具体的に現した、「新市まちづくり計画」を策定しました。
私は、合併協議会に設置された「新市まちづくり計画」を作るための委員会、新市建設計画策定小委員会の委員として、新しい市におけるまちづくりの基本方針や施策等、新しい市の姿について、検討をしてきましたが、「新市まちづくり計画」の策定にあたっては、「新市まちづくり住民意識調査」や「まちづくりフォーラム」を行い、住民の皆さんの意見を聞きながら進めました。全体として、今までの3市町村を大切に考えて作成をしました。
ところで、新市まちづくり計画では住民参画の必要性についても触れていますが、そのことについて住民代表の羽生委員さんはどのようにお考えでしょうか。
- 羽生委員
- これからは地方の時代です。末端の地域が行政に積極的に参加し、行政と住民の協働により、お互いに汗をかくことが大切だと思います。
- 中山コーディネーター
- 住民のみなさんが、積極的に行政に関わっていただくことができるような、新しい市ができることを期待しています。
|
新市の観光施策 |
- 中山コーディネーター
- 新市の観光資源の一つとして、南アルプスの存在というのはとても大きなものです。新しい市の将来像にも、「二つのアルプスに抱かれた自然共生都市」ということで、両アルプスの一つ、南アルプスが謳われています。
宮下村長さんは、新市における南アルプスを核にした観光について、どのようにお考えでしょうか。
- 宮下長谷村長
- 日本百名山のうち3峰を有する南アルプスは、国家的な財産です。しかし夏山シーズンが終わると、限られた人にしか訪れてもらえないという状況があります。
そこで、登山だけでなく渓流など他の自然資源と一体的に楽しんでもらえるように工夫したり、高遠の歴史文化財と連携させるなどすれば、もっと観光が多様化すると思います。
こうした観光施策を新市の目玉の一つとして発展させていくことは大切だと思います。
- 中山コーディネーター
- また、いよいよ来年度には、権兵衛峠トンネルが開通する予定です。木曽と新市の距離がぐんと短くなるわけですが、それにより地元住民や観光面にどのような変化があるのでしょうか。
- 小坂伊那市長
- 権兵衛峠トンネルが開通すれば、年間600万人の観光客が訪れる木曽谷と伊那との間が30分で行き来できるようになり、様々なメリットがもたらされると思います。
2つのアルプスを巡るツアーなど企画すれば、東西の交流がより進むのではないでしょうか。将来的には上伊那広域観光を視野に入れて進めていきたいと考えています。
- 中山コーディネーター
- 高遠といえば「桜」が全国的に有名なことは、もう、言うまでもありませんが、桜の時期といえばどうしても春に限定されてしまいます。
そこで伊東町長さんは、一年間を通した観光というものをお考えのようですが。
- 伊東高遠町長
- 桜の時期には全国から34万人から40万人の観光客が訪れますが、それ以外にも「だるま市」や「秋まつり」などにも力を入れ、通年観光が実現しつつあります。
新市になれば今よりも大きな観光イベントを行うことが可能。収益増や地域の一体感の醸造が期待できると思います。
|
新市の重点施策 |
- 中山コーディネーター
- さて、新市においては様々な施策が行われますが、その中でも特に重視している施策についてお話いただきたいと思います。
はじめに、宮下村長さん、いかがでしょうか。
- 宮下長谷村長
地域分権の理念の元で地域住民が努力をしていくのと同時に、新市としての一体性を確保することも重要です。そのためにも、それぞれの地域の特色をお互いに理解し合うことが大切です。
長谷村の役割は自然を守ることだと思います。自然を通じた交流を深めたり、過疎化による荒廃から農地を守るために担い手を育成する施策を重視したいと思います。
- 中山コーディネーター
- 次に、小坂市長さんお願いします。
- 小坂伊那市長
- 福祉施策は現状のとおり進めていきたいと考えています。また、産業の振興、働く場の確保、少子化対策、3市町村が一体となれるような観光施策にも重点を置いていきたいと思います。
- 中山コーディネーター
- 続いて、伊東町長さんお願いします。
- 高遠町長
- 私も福祉施策に最重点を置きたいと考えています。また、災害対策、安心安全の地域作り、少子高齢化対策、働く場所の確保、空家対策、足対策事業も重要です。
観光については、道路や歴史文化財の整備を進めて、よりよい観光を目指したいと考えています。
- 中山コーディネーター
- 住民代表の視点として、羽生委員さんはいかがでしょうか。
- 羽生委員
- 三峰川総合開発は国家的なプロジェクトであり、この地域の重要なプロジェクトでもあります。将来的の理想は上伊那が一つになることであり、そのための第一歩が今回の合併だと考えています。先取りをして行動を起こすことが時代の責務だと思います。
|
 |
新しい市への思い |
- 中山コーディネーター
- 最後に、新しい市への思いを込めて、宮下村長さんにまとめをお願いします。
- 宮下長谷村長
- この3市町村は昭和の大合併以来、一生懸命に歩んできました。国は大きな借金を背負っており、その対策として三位一体の改革などが進められています。
合併をしたからといってすべてがバラ色になるわけではありませんが、南信の中核都市を目指して発展すべく、耐えるところは耐え、主張するところは主張し、それぞれの問題を一つひとつ解決しながら進んでいきたいと思います。
そして、後年に「平成の合併は良かった」といわれるような合併にしたいと思います。
|
(終了 午後 0時 2分) |