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――― 未来のまちづくりを語ろう ―――
市町村合併シンポジウム
 
高遠会場 (平成17年1月23日) 講演要旨
 
 日 時 : 平成17年 1月23日 (日) 午後 2時00分 から 午後 3時40分 まで
 会 場 : 高遠町 「やますそ」 大会議室
 主 催 : 伊那市・高遠町・長谷村合併協議会 / 伊那市 / 高遠町 / 長谷村

 

 プ ロ グ ラ ム

1.開 会
2.高遠町長あいさつ
3.ビデオ上映
 「二つのアルプスに抱かれたまち」
4.シンポジウム
テーマ
 「未来のまちづくりを語ろう」
コーディネーター
 高遠町 北原 公雄 氏
パネリスト
 高遠町長 伊東 義人 / 伊那市長 小坂 樫男 / 長谷村長 宮下 市蔵
 高遠町 伊藤 のり子 氏 (伊那市・高遠町・長谷村合併協議会3号委員)
5.閉 会

 講 演 要 旨

北原コーディネーター
 このシンポジウムのコーディネーターをつとめさせていただきます、北原公雄と申します。よろしくお願いいたします。
 パネリストの皆さんは、それぞれ3市町村の代表として出席していただきましたが、今日は看板にありますように「未来のまちづくりを語る」という場ですので、現在の市町村にとらわれず、これからみんなで作る「新しい市」について十分に語っていただければと思います。
平成17年1月23日 高遠会場
 
 新しいまちの将来像
北原コーディネーター
 それでは最初に、「新しいまちの将来像」について、伊東義人高遠町長さんのお考えをお話いただきます。
伊東高遠町長
 地域特性を生かし、3市町村がお互いを尊重しあった合併をしたいと考えています。地域が大きくなると周辺部が寂れる心配はありますが、地域内分権によって特性を守り、地域協議会で住民の意見を反映させたい。これからは住民と行政との協働によって地域をつくっていく時代です。
 また、合併によって、高遠城址公園を中心とした観光を広域的、一体的に行うことができるのではないかと期待しています。
北原コーディネーター
 住民の視点からはいかがでしょうか。伊那市・長谷村のすばらしい点や新市になってのメリットについて、伊藤のり子委員さんにお聞きします。
伊藤委員
 権兵衛トンネル開通は高遠・長谷の未来を開いてくれるでしょう。3市町村の連携による相乗効果を期待しています。合併によって、長谷の自然、伊那のボランティア活動など、他市町村のよいところを共有できるのではないかと思います。
北原コーディネーター
高遠会場コーディネーター・北原公雄氏  3市町村が合併することについて、「行政区が広くなることにより、きめ細やかなサービスがなされなくなるのではないか」「事業や施設が中心部に集中し、周辺部が寂れてしまうのではないか」「地域の課題の解決が難しくなるのではないか」などということを不安に思う住民の皆さんもいらっしゃいます。
 このような不安を解消するために、「地域内分権」という考え方がありますが、新しい市においては「住民が主役の地域分権型のまちづくり」ということが重要施策の一つに掲げられています。
 この「地域内分権」について、伊東町長にお聞きします。
伊東高遠町長
 長谷・高遠・伊那は昔からの深いつながりがあり、現在も通勤、通学、買い物などで生活圏が一体化しています。
 昭和の高遠の合併では、旧村に置かれた支所が5年ほどでなくなり、住民に不便をかけましたが、今回の合併では地域内分権に重点が置かれているため、高遠・長谷には総合支所が置かれ、今と変わらないサービスを提供できます。特別職の区長が置かれ、議会的な役割をもつ地域協議会が設置され、住民の意見を取り入れることができます。
北原コーディネーター
 伊東町長からお話がありましたように、今まで私たちが大切にしてきた地域を大切にしながら、その上で、伊那・高遠・長谷が「一つの市」として一体性のある「新しい市」を作っていくことが大切のようです。
 例えば、3市町村を結んで流れる三峰川は、この地域のつながりを象徴するものだと思いますが、宮下市蔵長谷村長はどのようにお考えでしょうか。
宮下長谷村長
 三峰川は伊那市の水田に多くの水を供給しています。河川の氾濫で農地が被害を被り、農家が減少、結果的に過疎につながっています。
 三峰川を安定させ、住民が安心して暮らすためにも戸草ダムは必要ですが、長野県知事の脱ダム宣言により中断しています。戸草ダムをどうするかが今後の課題だと思います。
北原コーディネーター
 新市は上伊那の中核都市としてばかりではなく、南信の中核都市を目指しているということですが、そのためにどのようなまちづくりを進めていったらよいのか、小坂樫男伊那市長さんにお聞きします。
小坂伊那市長
 生活圏や歴史などに一体性がないと合併はうまくいきません。3市町村は生活圏や歴史においてもともと深いつながりを持っているので、うまくやっていけるのではないでしょうか。
 合併すると人口は7万4千人となり、南信では飯田に次ぐ大きい市になります。伊那の工業、高遠の観光、長谷の自然と地域の特色を生かした新市をつくっていきたいと思います。
 「新市まちづくり計画」の特色
北原コーディネーター
 さて、実際に新しい市を作るに当たっては、より具体的な計画や、指針が必要になります。
 伊那市、高遠町、長谷村合併協議会では、新しい市の姿を具体的に現した、「新市まちづくり計画」を策定しました。
 パネリストの伊藤委員さんは、合併協議会に設置された「新市まちづくり計画」を作るための委員会、新市建設計画策定小委員会の委員として、新しい市におけるまちづくりの基本方針や施策等、新しい市の姿について、検討をしてきました。
 伊藤委員さんに、この「まちづくり計画」がどのようにして作られたのか、また、この計画の特色について、お話をお伺いします。
伊藤委員
高遠会場パネリスト・伊藤のり子委員  新市建設計画策定小委員会は各市町村の代表が2名ずつ、計6名で構成され、計6回の会議を開催して計画を策定しました。地域の特性を生かした分権のまちづくりを目指した計画です。
 9月に一般住民のみなさんと中学生を対象にアンケートを実施し、11月にはまちづくりフォーラムを行い、新市に対する希望を基本目標、主要施策に反映させました。またタウンウォッチングでは他市町村の施設などを視察する中で、新しい発見ができました。
北原コーディネーター
 「新市まちづくり計画」には、今までの市町村を大切にしながら、新しい市における観光の新しい展開についても、記載されています。
 例えば、高遠は城下町として、長い歴史と優れた文化・教育の伝統を受け継いで現在に至っていますし、また「桜の町」としても全国的に名を馳せています。伊東町長さんは「新市のまちづくり」において、こうした素晴らしい資源をどのように生かそうとお考えでしょうか。
伊東高遠町長
 高遠町は町民のボランティアによって140年かけて、全国でも桜の3大名所と言われるようになりました。
 合併すれば、三峰川橋の手前からシャトルバスを出すなどして、大きな観光行政で総合的に実施することができるでしょう。
 だるま市、音楽祭、公園の秋祭りなども、さらに大きな規模で実施することができ、地域経済に大きな影響を与えることになります。地域に潤いをもたらす通年観光、広域観光を目指します。
北原コーディネーター
 南アルプスの存在というのも、新しい市において、とても大きなものです。新しい市の将来像にも、「二つのアルプスに抱かれた自然共生都市」ということで、アルプスの一つ、南アルプスが謳い込まれています。
 この南アルプスを核にした観光を、新しい市においてはどのように進めていくべきなのでしょうか。
宮下長谷村長
 南アルプスは国立公園で、全国100名山に選ばれる3つの山岳があります。南アルプスには50万人、仙丈、駒ヶ岳で10万人、7月から10月に観光客が集中しています。
 しかし、山岳観光だけでは満足してもらえない時代なので、三峰川の源流の開放など新しい取り組みが必要となっています。
北原コーディネーター
 さらに、いよいよ来年度には、権兵衛峠トンネルが開通する予定です。木曽と新しい市との距離が、ぐんと短くなりますが、それにより、地元住民や観光面にも変化があるのでしょうか。
小坂伊那市長
 権兵衛トンネルの開通により伊那−木曽間が30分でつながることで、木曽からの通勤、通学、買い物、通院が可能となります。また、木曽の年間600万といわれる観光客の流入も期待され、伊那地域に大きなメリットとなります。南北の交流が主であった伊那谷に、新たな東西の交流が生まれます。
 中京圏と関東圏の接点となる位置で、2つのアルプスを持つ市として多くの観光客が訪れるまちへの夢が持てるのです。
 なぜ、今「合併」か
北原コーディネーター
 ここで、3つの市町村が合併するということについて、もう一度考えてみたいと思います。
 なぜ、合併することが必要なのか。この疑問は、合併について考えるときに、真っ先に浮かぶ、基本的な疑問です。
 合併の必要性について、伊東町長さんにお聞きしたいと思います。
伊東義人高遠町長 伊東高遠町長
 昭和の合併からおよそ50年経過して、交通網整備でこの地域の生活圏は一体化しています。少子高齢化で小さな町村の維持はむずかしい状況です。県内ほとんどの市町村長が合併を考えなければならない状況です。
 伊那市の福祉行政や長谷の観光資源を、合併によって共有することができ、地域特性を生かした住民が幸せになる合併ができると考えています。
北原コーディネーター
 3市町村の合併の必要性について伊東町長さんにお話ししていただきましたが、合併に際しては、もちろん、住民のみなさんの声をお聞きし、要望を取り入れていくことが重要です。
 伊藤委員さんは、住民の代表として、どんなことを合併に期待しているのでしょうか。
伊藤委員
 合併による行財政改革を期待しています。また、住民自治の推進のために、行政の手助けをお願いしたいと思います。
 トンネル開通による観光客受け入れのために、行政は各地域の観光事業の手助けをしてください。
北原コーディネーター
 伊藤委員さんから、合併に期待することの一つとして、行財政改革をすすめてほしいという意見がありました。
 合併を検討している中で、行政改革の視点はどう考えられているのか、伊東町長さんにお聞きします。
伊東高遠町長
 合併することが自立することにつながると考えます。
 合併による行財政改革で議員、特別職、などの数が減りますが、サービス低下など住民に不安を与えないために、一般の職員については年数をかけて人数を削減していきます。
 各市町村の施設は共有できるので、無駄なものはつくらないなど経費節減をしていきます。
 よいところは伸ばし、無駄なことは省いていくことが必要だと思います。
北原コーディネーター
 「住民自治の推進」というお話もありましたが、このことについて、伊藤委員さんにもう少し具体的にご意見をお聞きしたいと思います。
伊藤委員
 新市においては、高遠と長谷の地域に、現在の役場と同じ機能を持つ「総合支所」が置かれ、区長や団体の代表で構成される地域協議会が置かれます。
 地域協議会は、すみよい地域づくりのために出された意見の中から「住民ができること」を取り上げて検討していくような場所になるように希望します。住民も行政に積極的に参画することが必要ですが、住民に過度な負担がかからないようにすることも必要かと思います。
 新市において重視する施策
北原コーディネーター
 さて、新しくできる市においては、様々な施策が行われますが、そのなかで重視している施策についてお話いただきたいと思います。
 はじめに伊東町長さん、いかがでしょうか。
伊東高遠町長
 高遠は人口減少が続いています。複式学級も近い状況です。定住対策として町営住宅の建設を行い、ある程度の成果を上げているので新市においても続けていきたいと考えます。
 また、結婚対策、空家対策などについても行っていきます。高齢化により、交通弱者が増えています。町内循環バスを引き続き実施しする中で、伊那市街や中央病院を経由する路線も検討します。
 権兵衛トンネル開通によって152号線の交通量が増加するので、高遠バイパス、片倉、四日市場の国道整備を進める必要があります。また、渋滞対策としても三峰川右岸道路の整備が必要だと考えています。
北原コーディネーター
 宮下村長さんは、どのようにお考えでしょうか。
宮下長谷村長
 地域内分権で特色あるまちづくり目指します。
 長谷村は水源地域としてのつとめである治山、治水事業に重点を置きます。また山村と都市の交流事業を、新市全体に広げたいと考えます。
 高齢化が進んでいるため福祉、保健、健康事業に力を入れていきます。人口減少や高齢化で農地の荒廃が進んでいるので、中高年の力で農業の維持をお願いしていきます。自分達の地域は自分達の手でという考え方で住民意識の高揚を図っていきたいと考えています。
北原コーディネーター
 伊那市長さんは、いかがでしょうか。
小坂伊那市長
 住民アンケートでも福祉の充実を望む意見が多くありますので、少子高齢化対策を引き続き実施していきます。サービスを低下させるような合併は間違いです。産業の振興を図るため、企業誘致を行い、働く場所を確保していきたいと考えています。
 また、新市の広域的な観光についても考えていきます。
北原コーディネーター
 伊藤委員さんには、住民の視点として、新市に寄せる思いをお聞きしたいと思いますが。
伊藤委員
 小さな集落でもがんばっているところがあります。そこに生活する人の笑顔を見ると、そういった地域の生活を守らなければと思います。共に手を取り合って笑顔で暮らせるような地域になればいいと思います。
高遠会場
 
 新しい市への思い
北原コーディネーター
 最後に、新しい市への思いを込めて、高遠町長さんにまとめをお願いします。
伊東高遠町長
 福祉はより高く、負担はより少なく、住民がより幸せになる合併にしたいと願っています。
 地域の個性を大切に、住民と行政の協働による地域づくりによって、合併してよかったと言われるようにしたい。
 お互いを認め合って、それぞれの伝統や文化を大切にしながら新しいまちづくりに取り組みましょう。
(終了 午後 3時40分)

 
 
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