新市まちづくり計画
 
 
 
  目 次 第1章
第2章
第3章 第4章 第5章 第6章 第7章 第8章 top  
 

 第2章 新市の概況

 
 
 第1節 位置・地勢
 

本地域は、長野県の南東部に位置し、南東側は南アルプスを越えて山梨県と静岡県にも接しています。また、西側は中央アルプスを境に木曽地域に接しています。
 
本地域は、西部に中央アルプス県立公園を有しており、中央には標高約600m前後の伊那盆地が開け、天竜川や三峰川、その支流を合わせて南下し、扇状地や河岸段丘が形成されており、田園、畑作地帯が開け、伊那谷特有の美しい景観をつくり出しています。
 
一方、東部は、南アルプス国立公園、三峰川水系県立公園を有し、豊かな自然と広大な山地に抱かれており、水と緑に囲まれた農山村を形成しています。また、広大な山林は地域の景観を形成するとともに、水源かん養 ※4 、保健休養等の公益的機能を有しており、下流域の洪水の防止や農業用水の確保などにも大変重要な役割を果たしています。

 
 
※4 水源かん養
雨や雪などの水を土壌に蓄えて、その水を浄化しながら徐々に流していくはたらき。
 
 

図 位置図
図 位置図

 

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 第2節 面積
 

本地域の総面積は667.81km2で、長野県の約5%を占めています。土地利用については、山林が44.6%、原野が18.6%と両者で過半を占めており、農地が8.7%、宅地が2.6%となっています。また、可住地面積 ※5 は総面積の21.7%と小さくなっています。今後は森林などの自然と共生しつつ、山林に次いで広い面積を占める原野の活用や限られた土地の有効利用を図ることが必要となっています。

 
 
※5 可住地面積
総面積から、山林、原野、河川、湖沼等を除いた面積。
 
 

図 土地利用
図 土地利用1
 
図 土地利用2
注 : 「その他」には、「保安林」「公衆用道路」「河川敷・ダム」「用水路」などが含まれています。

出典 : 各市町村資料より

 

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 第3節 気候
 

本地域は、東と西に3,000m級の山岳を有し、その中央部に天竜川・三峰川が流れており、これらの川を中心とした盆地ということができます。この地形上の特色がそのまま気温にもみられており、南北に長く、南に傾斜しているため、南にいくにつれて気温がやや高くなり、また、天竜川を挟んだ東西についても東側の方がやや気温が高い傾向にあるなど複雑な分布をしています。また、二つのアルプスに抱かれた標高600m以上の高地にあるため、年間平均気温が11.0Cと、冷涼な気候となっています。
 
一方、降水量は表日本型に属しており、年間降水量は1,397mmとなっています。
 
夏と冬には少なく、春と秋は多く、量は冬期の3倍程になるなど季節の特徴がはっきりしています。東部地域は降雪量も少なく晴天の日が多いのに対し、中央アルプス山麓をはじめとする西部地域は東部地域より多くなっています。

 

図 気温と降水量 (2000〜2003年の平均)
図 気温と降水量 (2000〜2003年の平均)

出典 : 気象庁ホームページ

 

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 第4節 合併の歴史
 

3市町村の行政単位は、昭和の大合併の際にほぼ確立されました。伊那市では、昭和29年(1954年)から市制が施行されています。

 

図 3市町村の合併の歴史
図 3市町村の合併の歴史

出典 : 全国市町村要覧

 

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 第5節 人口
 
 (1) 人口 
 

本地域の総人口は、最新の2000年国勢調査によると71,552人となっており、これを現在の県内他都市と比較すると、長野市、松本市、上田市、飯田市に次ぐ第5位の人口規模の都市となっています。人口の推移を見ると、1970年以降増加傾向にありましたが、1995年をピークに減少に転じており、今後は、全国的な人口減少傾向と同様に推移すると予想されています。

 

図 県内都市の人口規模
図 県内都市の人口規模
 注 : 千曲市および東御市は、合併前市町村の人口を合計しています。

出典 : 国勢調査(2000年)

 

図 3市町村の人口推移
図 3市町村の人口推移

出典 : 国勢調査

 

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 (2) 年齢構成 
 

本地域の人口の年齢構成比の推移をみると、少子・高齢化の進行により、15歳未満が減少し、65歳以上人口の割合が増えています。また、高遠町や長谷村の地域を見ると65歳以上人口の割合が30%を大きく超えています。

 

図 3市町村の年齢構成比の推移
図 3市町村の年齢構成比の推移

出典 : 国勢調査

 

図 市町村別年齢構成比
図 市町村別年齢構成比

出典 : 国勢調査(2000年)

 

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 (3) 世帯数 
 

全国的な核家族化の進行や単身世帯の増加傾向の中で、一世帯あたり人員数は低下傾向にあり、本地域においても2000年には3人以下になっています。このため、一般世帯の総数は、1980年以降を見ても増加傾向にあります。

 

図 一般世帯数と一世帯あたり人員の推移
図 一般世帯数と一世帯あたり人員の推移

出典 : 国勢調査

 

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 (4) 就業者人口 
 

第一次産業 ※6 の就業者人口は、年々減少しており、2000年現在4,221人となっています。減少の要因としては、就業者が高齢化し、後継者の確保が困難であることなどがあげられます。
また、第二次産業 ※7 の就業者人口は、2000年現在で15,734人に達しています。第三次産業人口を上回った時期もあり、これまでは、増加傾向にありましたが、1995年以降は減少に転じています。
第三次産業 ※8 の就業者人口は、2000年現在18,706人です。全国的な第三次産業へのシフトの傾向とともに、地域内への商店や企業等の進出により、増加傾向にあります。

 
 
※6 第一次産業
農業、林業、漁業。
※7 第二次産業
鉱業、建設業、製造業。
※8 第三次産業
電気・ガス・熱供給・水道業、運輸・通信業、卸売・小売業、飲食店、金融・保険業、不動産業、サービス業、公務等。
 
 

図 3市町村の産業別就業者人口の推移
図 3市町村の産業別就業者人口の推移

出典 : 国勢調査

 

図 市町村別就業人口構成比
図 市町村別就業人口構成比

出典 : 国勢調査(2000年)

 

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 第6節 本地域の特徴と課題
 
 (1) 特 徴 
 
豊かな自然  新市は、東は南アルプス、西は中央アルプスという雄大な二つのアルプスに抱かれた全国的にも類を見ない自然豊かなすばらしい地域です。間を流れる天竜川や三峰川沿いには、平地が広がっており、全国的にも名高く美しい河岸段丘や田園風景がみられます。さらに、南アルプスの女王と称される仙丈ケ岳に端を発する三峰川は、山々から集められた清流が、住民に豊かな水の恵みをもたらしています。
 
広域的な交流  新市の交通面をみると、中央自動車道や国道153号等の幹線道路が整備され、長野市、松本市や諏訪・飯田方面へ短時間で行くことが可能となっています。さらに東京圏・名古屋圏の中間に位置していることから、商工業にとって、優位な立地条件の下にある地域となっています。
 2005年度に権兵衛峠道路が開通すると、木曽地域までの所要時間が約1時間短縮され30分となり、また、1年を通じて通行可能になることから、今後、木曽との交流が深まることが予想されます。
 そうした中で、東西を結ぶ幹線道路や国道153号伊那バイパス、国道152号の整備をすることにより地域の重要な道路網を形成し、東京圏・名古屋圏を結ぶ新たな交通・物流ルートとなることが期待されています。
 
産業のバランス  新市には、上記の農業の他、電気、精密、機械、食品など製造業が発展し、製造品出荷額も順次増加しています。伊那テクノバレー圏域の中核都市として、いくつもの工業団地を形成しています。また、伊那地区を中心に中小の小売店や郊外型の大型店などが集積しており、産業がバランスよく発展している地域となっています。
 
豊かな農産物  新市では、肥沃な土地と豊かで良質な三峰川水系の水を活かした米作りのほか、野菜、果樹、花卉(かき)等の農業が盛んです。アルストロメリアやスイートコーン、寒天製品などは全国的な生産地であるなど農産物の種類も豊富であり、地域住民に安全でおいしい食材を提供する、地産地消の取り組みも進みつつあります。
 
歴史・文化  新市には、歴史・伝統・文化が継承されており、住民はこれらを大切にしています。
 伊那地区のやきもち踊りや羽広の獅子舞、高遠地区の高遠ばやしや灯籠まつり、長谷地区の中尾歌舞伎等は、地区の住民が大切に継承しています。また、高遠藩の藩校「進徳館」に象徴される教育的風土は、本地域から多様な人材を育成し、輩出してきました。
 
生活の利便性  新市は、伊那地区を中心に、商業、教育、医療といった都市生活機能が充足されており、住民生活を支えています。また、福祉施設やスポーツ施設なども充実しています。
 
著名な観光資源  新市には、「天下第一の桜」と称される高遠城址公園の桜や仙丈ケ岳を中心とする南アルプス国立公園といった、全国的な観光資源があります。また、スキー場や農業公園、温泉入浴施設など多彩な資源も整備されており、全国から毎年多くの観光客がこれらの観光地を訪れています。
 
良好な人間関係  新市の住民は、人情味が豊かです。また、地域社会や地縁等のつながりを大切にしており、地域住民は伝統的な行事やお祭、イベント等の活動に積極的に参加しています。まちづくりに対しても主体的に取り組んでいこうとする意識の高い地域であるといえます。
 
 
※9 伊那テクノバレー
県の推進するテクノハイランド信州の拠点の一つで、国内有数の電子産業エリアをめざす。伊那技術形成センター等の施設がある。
※7 第二次産業
地域で生産されたものを地域で消費すること。
 
 

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 (2) 課 題 
 
 [1] まちのイメージが弱い 
 

本地域は、自然や文化等の面で個性豊かな3市町村から構成されていますが、本地域が対外的に発信するイメージは強いものとはなっていません。そのため、まちのイメージが弱くなっています。
県内においても、強い魅力で県外の観光客を誘致している地域に比べ、伊那地域はこうしたイメージを強く発信できない状況となっています。
このため、高遠城址公園の桜や雄大な南アルプス・中央アルプスの自然、歴史・文化など、他の地域にはない観光資源を活用し、また、2005年度の権兵衛トンネル開通に伴い木曽方面や諏訪方面と連携した観光ルートを開発することが課題となっています。
一方、上伊那地域における中核都市のイメージをさらに強化するには、まちの顔となる魅力的で求心力のある中心商店街の再生が必要です。

 
 [2] 過疎化に伴う地域社会の問題 
 

本地域の東部に位置する高遠町や長谷村では、過疎化(人口減少や高齢化等)により、若者の流出に伴う人材不足やこれまで大切にしてきたさまざまな地域活動の停滞と、それに伴う地域文化の継承が難しい事態に直面しています。また、農地や森林を保全する担い手も不足しており、環境面や国土保全の面でも重大な局面を迎えているといえます。

 
 [3] 都市化の進展に伴う地域社会の問題 
 

伊那市の一部地域では、都市化の進展に伴い、地域社会におけるさまざまな問題が生じています。地域の自治組織に加入しない世帯の増加に伴い、自治組織の共同作業に支障が出ています。また、これまで農地であったところが宅地化されたところでは、生活基盤の整備が追いついていないのが現状です。

 
 [4] 地域経済の停滞状況 
 

わが国全体の経済は、一時期の低迷を脱し、やや明るい兆しが見えていますが、地域経済の復活はまだはっきりしたものとなっていません。
本地域の主力産業は、電気機械、精密機械、機械工業や食品といった製造業であり、一部企業の積極的な設備投資は見られるものの、地域産業全体の景気の回復にはいまだ至っていません。
また、農業従業者の高齢化と後継者不足、それに伴う耕作放棄地の増加といった厳しい問題を抱えています。
商業では、郊外の幹線道路沿いに大型店が進出したことで、郊外の活性化は進みましたが、一方で中心商店街の衰退が顕著になると共に、中心商店街の魅力が低下してきています。したがって、中心商店街への活性化対策を一層進める必要があります。

 
 [5] 雇用機会不足等による若年層の流出 
 

わが国の地方都市に共通する課題といえますが、本地域においても、地域経済の停滞により、若者にとって魅力ある就業の場が少ないことなどから、大都市圏への若者の流出が進行しています。この地域に若者が定着できるように、就業の場を増やす方策として、新産業の創出支援や企業誘致などが求められます。
また、都市的な魅力が少ないこと等も、若者の流出要因の一つとなっていると考えられます。

 
 [6] 行財政改革と住民参加意識の高まりへの対応 
 

全国的に地方自治体の財政は逼迫傾向にあり、本地域においても、行財政改革を早急に実行していかなければなりません。
一方、これからの地域づくりには、住民自らが積極的に取り組んでいく必要があります。こうしたことから、行政から住民への情報公開をより進め、説明責任を果たしていく必要があります。
このような住民参加型の行政は、住民との協働の仕組みづくりを進め、各地域に密着していく必要があります。

 
 [7] 交流を阻害する交通の隘路(あいろ) ※11 
 

本地域は、高速道路等で東京圏・名古屋圏と結ばれており、中央自動車道の開通以前に比べると、広域的な交通条件は飛躍的に改善されています。 しかし、地域の道路網は南北方向が主に整備されているものの、ルートの二重化、多車線化が進んでいない区間もあるため、事故時等の渋滞が懸念されます。また、東西に延びる道路が少ない状況にあり、本地域を一体的に発展させるための阻害要因となっています。
生活道路は拡幅・改良等の整備が進まないなどの課題があります。
一方、公共交通は、JR飯田線やバス交通の利便性が低いことが、車の運転ができない高齢者等、いわゆる交通弱者の交流を阻害しています。

 
 [8] 健康・福祉関連の問題 
 

本地域には、伊那中央病院を始め、医療・福祉施設については、ひととおりの施設があります。
しかし、伊那中央病院の満床状況の解消、各地区での身近な医療・福祉サービスを充実することなど、将来の少子・高齢化社会の到来に向けて、住民の懸念を解消していくことが必要です。

 
 
※11 隘路(あいろ)
物事をするのに妨げとなる困難や障害。
 
 

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 参考:住民アンケートにみるまちづくり施策に対するニーズ
 

「新しいまちづくり住民意識調査」(2004年9月実施、各市町村ごとに無作為抽出された住民7,000名が対象)による、29施策ごとの満足度を縦軸、優先度を横軸(それぞれ4段階で評価)とした散布図に示すと、次の図のとおりとなります。
 
この結果によると、最も緊急度が高いと考えられる、強化領域の(満足度が低く優先度が高い)項目としては、「工業振興や労働機会の確保」等の産業関連分野のほか、「公共交通機関」等があります。一方、「上下水道」「教育施設」「ごみ処理」「保健・医療」等の項目については、維持領域(満足度が高いが優先度も高い)になっています。さらに、両者の中間には、「防災・交通安全・消防」「環境保全」「子育て支援」「福祉」等の項目の優先度が高くなっています。
 
本アンケートによると、産業分野、生活基盤、健康・福祉等の施策に対する住民のニーズが強いことがわかります。

 

問7 地域の現状 全体
問7 地域の現状 全体

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