江崎孝坪

　明治37（1904）年、伊那市高遠町に生れる。本名は孝平。画家をめざして上京後、呉服商で図案を描くかたわら蔦谷龍岬に大和絵を学び、龍岬の死後、前田青邨に師事した。昭和2年、第8回帝展で「晩秋」が初入選を果たして以来、戦後も日展を中心に活躍し、「手向け」、「像造」、「政宗」が連続して特選を受賞した。有識故実に精通していた孝坪は、舞台装置や映画の美術考証をこなし、新聞小説等の挿絵も描いた。黒澤明監督による「七人の侍」「蜘蛛巣城」の美術考証、吉川英治「太平記」、井上靖「真田軍記」「風林火山」といった小説の挿絵を担当した。

　孝坪は、菩提寺である伊那市高遠町建福寺に、「薬師」（昭和25年、第6回日展出品作）を母の供養にと寄贈している。