中村弥六と進徳の森
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更新日:2019年5月29日
進徳の森と林業遺産認定証
平成30年5月29日、伊那市の「進徳の森と中村弥六の関連資料群」が、「林業遺産」に登録されました。
「林業遺産」とは、日本各地の林業発展の歴史を将来にわたって記憶・記録していくために、一般社団法人日本森林学会が認定しているものです。近年注目が高まっている「中村弥六(なかむらやろく)」と「進徳の森」について、ご紹介します。
近代林学の父「中村弥六」
中村弥六
中村弥六は江戸時代末期の安政元年(1854年)、高遠藩士中村元起の四男として、現在の長野県伊那市高遠町に生まれました。幼い頃から優秀で、藩校進徳館で学んだ後、明治2年(1869年)に上京し、東京開成学校(東京大学の前身)で漢学やドイツ語を学びました。
卒業後、教員を経て内務省に勤務し、おもに山林関係の仕事に携わりましたが、日本の国土の6分の5以上を占める山林原野の活用が、日本経済の発展のために極めて重要であると痛感した弥六は、林学発展のため、先進国であるドイツへ自ら留学し、森林経理学や植物学、林政学など、近代ドイツ林学を基礎から学びました。留学当時、信州産カラマツのヨーロッパ導入にも貢献しています。
帰国後は東京山林学校(後の東京大学農学部)の初代教授となり、多くの人材を育てるとともに、森林を守りながらも、経済活動と結びついたお金になる森林経営を研究実践しました。
林業の振興には政治の力が必要だと考えた弥六は、後に政治家に転身し、森林法の制定などに尽力し、明治32年(1884年)には日本初の林学博士となっています。
林業以外ではフィリピンの独立戦争を支援するなど、国際的な問題にも関わりましたが、昭和4年(1929年)に76歳で没しています。
中村弥六が整備した「進徳の森」-大正生まれの外国産樹木の森―
中村家の墓地と進徳の森
大正元年(1911年)頃、大雨で峰山寺(伊那市高遠町東高遠)の裏山が大きく崩れ、弥六の先祖が眠る墓地も被害を受けました。これを知った弥六は、周辺の土地を購入し、当時珍しかった外国産の樹木の苗を農林省林業試験場から取り寄せて植樹しました。
この時植えられたユリノキ、ストローブマツ、ドイツトウヒ、ヒマラヤスギ、ヨーロッパクロマツ、ヨーロッパヤマナラシ、リギダマツは、この地の風土に合っており、100年以上経った今も枯れることなく、大きく成長しています。
外国産樹木だけでなく、カヤ、カラマツ、コナラなども植えられており、在来の樹木も弥六の想いを受け継ぐかのように立派に成長しています。
弥六が整備した森(約0.3ヘクタール)は、昭和35年(1960年)に高遠町へ寄贈され、弥六が学んだ藩校進徳館にちなみ「進徳の森」と名付けられ、一般に公開されています。
直径40センチを超えるヒマラヤスギ
高さ35メートルを超えるユリノキ
リギダマツ
「進徳の森」に関する参考文献
大正生まれの外国産樹木の森ー上伊那郡高遠町進徳館の森を訪ねてー(外部サイト)
長野県林業総合センターが1997年に発行した『技術情報』(No.96)に掲載された小山泰弘氏の論考です。
長野県林業総合センターのホームページ内へリンクしています。
中村弥六の関連資料群
伊那市立高遠町図書館には、中村弥六に関する書籍等がたくさん保管されています。そのうち、林業関係資料が林業遺産に認定されました。認定された8件のうち、下記の資料を閲覧することができます。詳細については、高遠町図書館へお問合わせください。
高遠町図書館
電話
0265-94-3698
資料名 | 著 者 | 発行者 | 発行年 | 備 考 |
---|---|---|---|---|
林業回顧録 | 中村弥六 川瀬善太郎 |
大日本山林社 | 1930 | |
中村弥六関連新聞記事 | 新聞コピー | |||
中村弥六博士号学位請求論文 | 中村弥六 山縣光晶 訳 |
1882 | ||
中村弥六の林政観 | 筒井廸夫 | 財団法人 日本森林文化協会 |
1985 | 「森林文化研究 第6巻1985年9月 第1号」 |
中村弥六 近代林学の先駆者にして反骨の政治家 |
小林富士雄 | 大日本山林会 | 2009 | 「山林 No.1496 2009年第1号」 「山林 No.1497 2009年第2号」 |
中村弥六物語 | 森下正夫 | 高遠町 | 1997 | |
信州カラマツ | 武井富貴雄 | 信州地域材 利用拡大推進協議会 |
2016 |
高遠町図書館の利用案内
進徳の森への行き方
進徳の森は、峰山寺(長野県伊那市高遠町東高遠2317)の墓地の裏手(東側)にあります。境内入口付近に誘導看板が出ていますので、案内にしたがってお進みください。自動車でお越しの方は、最寄りの市営駐車場(高遠城址公園駐車場や花の丘公園駐車場)などをご利用ください。峰山寺までは、いずれも徒歩10分程度です。
ご不明な点は、高遠町総合支所農林建設課へお問合わせください。
高遠町総合支所農林建設課
電話
0265-94-2555
50年の森林(もり)づくり
伊那市が進めております「50年の森林づくり」の取組みについては、こちらからご覧ください。
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伊那市役所 教育委員会 生涯学習課 高遠教育振興係
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