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森林と教育先進国・フィンランド

更新日:2020年3月26日

 伊那市長 白鳥 孝

 ウィーンからザルツブルグに向かう列車は、時速200km前後を示しながら走ります。
なだらかな丘陵の起伏を繰り返す畑には、50cmほどの背の低いトウモロコシが枯れたままに残っています。どこまでも広がる畑は10月も下旬と言うのに、菜の花が疎らに咲き、そのなかに背の低いヒマワリが花をつけています。どれも初めて見る不思議な風景です。列車は遠くに岩山を望む丘陵地帯を快適に走り、時々現れる農家の佇まいも清楚なつくりで、どの家も窓には花が飾られています。日本にありがちな大規模な太陽光発電施設やゴルフ場はどこにもありません。家々も牧場も畑もすべて綺麗に手入れされ、風景を阻害するものは何もありません。列車の窓からはいつまでも見飽きない風景が続きます。
 苦手な飛行機に乗って、10月下旬にオーストリアとフィンランドを訪れました。オーストリアは、チロル地方の山岳高原観光の現状と、森林先進国の森林活用についての視察です。フィンランドは、フィンランド共和国北カルヤラ県と伊那市との林業・森林産業・再生可能エネルギー・木材利用・バイオエコノミーなどの分野に関する覚書の調印を目的として行きました。覚書の内容は次の通りです。

 長野県伊那市及びフィンランド共和国北カルヤラ県は、林業・森林産業・再生可能エネルギー・木材利用・バイオエコノミーの分野において、双方に有益な交流を行い、協力関係を築いていくことを確認するとともにここに署名する。なお双方が署名した日からの3年間、次の取り組みを集中的に進めることとする。

  • 定期的に、それぞれの活動に関する情報を提供する。
  • 科学技術・知見・イノベーションに関する知識の交流を促進する。
  • 技術移転、イノベーション交換、ビジネス協力を目的に関係する分野の職員及び専門家の相互訪問を推進する。
  • 共同プロジェクトや相互訪問の金額負担は、その都度状況により決定する。

 フィンランド共和国は人口約550万人、面積は33.8万キロ平方メートルで、そのうち森林率は73パーセント(日本は67パーセント)です。特に世界的に知られていることは、世界の幸福度ランキングが1位であること。子どもたちに大人気のムーミンが生まれた国であり、またサンタクロースの住んでいる国であることなどです。また、環境問題には国民を挙げて取り組み、生物多様性はもとより、持続可能なバイオエコノミー政策を推進しています。例えば高層ビル建設といえば、一般的には鉄とコンクリートのビルが思い浮かべられますが、この国では木で造られます。私が視察した14階建てのビルは、CLT(縦横に板を交互に貼り合わせた木材で、極めて頑丈)で造られていました。フィンランドではごく普通の建築です。さらに循環型経済の視点からは、「EUでは代替品のあるプラスチック製品は2020年からは禁止とする」という驚くべき政策があります。プラスチックの代替品のある皿やコップ、スプーンなどはその対象となります。さらにフィンランドでは石炭の使用は2029年終了、石油・天然ガスなどの化石燃料も2035年には使用できない。など驚くような政策が目標として定められて着々と進められています。

フィンランドの産業はかつて農業と林業中心であったものが、ノキアに代表される世界的な携帯電話会社や、コンピューターシステムに欠かせないオペレーティングシステムの代表的企業のLinux(リナックス)などのハイテク産業の先進的工業国へと変貌してきています。目覚ましい変化と進化、フィンランドのその背景にある要因は何なのか?今回の視察の主たる目的が、森林・林業であったにも関わらず、日本の向かうべき方向、伊那市の未来を考えたとき、その原動力となっているフィンランドの教育システムについては、しっかりと学ぶべきものと強く感じた次第です。
10月25日にラップランド大学付属小中学校の視察をしました。この学校方針には3つの教育の柱があります。
(1)子どもの基礎教育 (2)教師の養成 (3)教育に関する研究 です。
フィンランドは子どもに「コンピデンス(実力)」をつける教育をしながら、小学1年生から中学3年までがともに学び、小さいころから体系的に将来の職業を見すえた教育の実践をしています。例えば、教師は環境・自然・トレッキングなどについて学び、子どもたちには一人で森のなかで過ごせる力をつけさせ、環境に関するテーマをテキストに取り入れ、さらに森を尊敬し持続可能な社会を創るためにはどうしたらよいかを授業に展開しています。1年生から9年生(中学3年生)までは、基礎教育に重点をおき、卒業すると高等教育に進むか、専門学校へ行くかを決めています。

驚いたのは、小学校1年生では「森を尊敬することの意味を教え」、「森へ行くときの衣服を自身で考えさせ」、「森のなかで食べられる物を探して食べる」教育を、レベルを上げながら身につけさせています。5年生になると「カヌーで何キロも移動し」、「仲間とテントに泊まり」、「焚火をして食事をつくる生活」を数週間行うなど驚きの教育内容です。ともかくフィンランドの教育はテスト重視(詰め込み式)ではなく、学習内容の重視、人としての生き方から始まります。テーマ別教育はフィンランド教育の特徴で、科目別の教育の上にテーマ別の教育があり、いわゆる「実学」と「応用」の世界です。加えて多言語能力とICT教育もしっかりと展開しています。
授業は少人数で10~20人、教師は一般的なサポートと特別なサポートをしています。特別なサポートは、授業で理解度が不足または不安な場合には、特別教室に同様な子どもを集め丁寧に学習を学び直し、理解した段階で元の教室に戻す仕組みです。授業は多彩で、
(1)デザインや絵画に関するもの(2)木工や椅子のデザインを学ぶもの(3)ミシンで服を製作するもの(4)クッキングにおいては、細かなゴミの分別仕分けを徹底し、驚くべきは大きな先の尖った包丁が20丁以上も掛けてあり、子どもたちは普通に扱います。

ともかく詰め込み式ではなく、子どもの一生のなかで必要な授業としての学校が存在しています。まさに旧高遠藩の藩校「進徳館」で行っていた「実学」そのものです。個々の理解度や進度は異なりますから、教師はそこを慧眼けいがんしながら「特別サポート」で学び直しを行って子どもの成長を支援します。まさに白眉はくびと言えます。
徹頭徹尾に森林の活用をし、新たな森林産業を興すべく研究が進んでいる国がフィンランドであり、そのための人材育成・教育に国を挙げて注力しているのが北欧の小国フィンランドです。この国は人口550万人の小国の印象がありますが、自国の置かれた環境を十分熟知した上での国造りが進められています。現在の教育・研究・資源の利活用など、わが国の現状と比較したとき、大いなる不安を感じざるを得ません。スマホでゲームや漫画、SNSに興じる日本の現状を考え憂うとき、改めて伊那市の向かうべき未来像として、
(1)自分たちの食べるものは自分たちで生産する(農業振興) (2)自分たちの飲む水の確保(森林の手入れによる安定的な水を涵養かんよう) (3)自分たちの使うエネルギーは身近で調達できる木質バイオマスや水力発電等に早期にシフト) (4)世界的な景観を有する伊那谷(Ina Valley)は、今を生きる私たちが後世に伝える責務があり、そしてこれらを実現するためには何と言っても人であり (5)教育・人材育成が喫緊の課題であることを改めて確認した次第です。令和の時代に「進徳館の実学」の時代が訪れたといっても過言ではなく、明治維新を支え牽引した偉人たちに倣うことが日本を支え、これからの地域づくりの嚆矢こうしとなるものと信じています。

「やますそ」 伊那市高遠町婦人会 第63号文集 掲載

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