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信州そば発祥の地

更新日:2014年10月1日

 伊那市長 白鳥 孝

 もう随分と昔の話ですが、結婚した年の冬に家内の実家に行った時のことです。とても美味しい、というより珍しいお蕎麦を食べさせてもらいました。珍しいのは蕎麦つゆで、竹のおろし金でおろした大根を、さらしで絞り、そこに焼いた味噌を溶いて蕎麦つゆにします。初めて食べた手打ち蕎麦は、大根の辛さと、焼いた味噌の香りと蕎麦のつくりだす素朴で不思議な風味に、おおいに感動したのでした。今では、この種の蕎麦が「おしぼり蕎麦」と知りましたが、こんな美味しいお蕎麦が伊那の農家に伝わっていたことも驚きでした。伊那は信州そば発祥の地として知られています。今から1300年ほど前の奈良時代、「役小角(えんのおずぬ)」が修験の途中、内の萱(うちのかや)の村人に伝えたという「行者(ぎょうじゃ)そば」は広く信州に流布したといいます。そして江戸時代のはじめ、高遠藩主の保科正之(ほしなまさゆき)公が将軍家に献上し、また正之公もたいそう愛(め)でたという「高遠そば」は、信州そば発祥の地が伊那であることを広く全国に知らせています。その後、正之公は最上藩、そして会津藩へ転封(てんぽう)した折にも、そば職人を引き連れそば文化を伝えています。400年経った今でも、会津地方には辛(から)み大根の絞り汁に焼き味噌を溶いた「高遠そば」が脈々と生き続いています。この秋、伊那市内では、4週連続してそば祭りが行われます。伊那市内の萱の「行者そば祭り」、みはらしファームの「みはらし新そば祭り」、高遠城址公園の「高遠城址の新そば祭り」と「山麓一(さんろくいち)の麺街道フェスタ」です。そば通にはたまらない垂涎(すいぜん)のそば三昧(ざんまい)です。鮮やかな紅葉と素朴な信州蕎麦、信州伊那に足をのばしてみませんか?

日本水道新聞「水魚」自由エッセイ 2013年10月17日号 掲載

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