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全国削ろう会・信州伊那大会

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更新日:2019年9月27日

 幅およそ60mm、長さ1,500mmのヒノキの角材を、かんなでいかに薄く長く削ることができるか、1000分の1ミリを競うという真剣な遊びの大会がありました。一般的な鉋と五寸(150mm)鉋の部で、2日間にわたり全国から430人もの伝統技術の匠、職人たちが集い「全国けずろう会・信州伊那大会」が開催されました。他に削る・・こだわった「まさかりによるはつり」、「やりがんな」、「手斧ちょうな」など、時代劇映画か考古資料館の世界が目の前で実演されたのです。
 「削ろう会?いったい何のこと?」、「鉋で木を削るだけの全国大会?」、「何が面白くて集まるの?」と、最初は素直に受け入れられない「削ろう会」の名前でした。しかも2日間にわたり、その匠の技を見に全国から8,000人以上の見物人が来ると言います。たかが削るだけのことにそんなに集まるのか?最初は眉唾まゆつばもの、噴飯ふんぱんものとして真剣には聞いていなかったのも事実です。
 当日は、直径50cm、長さ6mものアカマツの丸太に乗って、根気よく鉞で斫っている若い職人、四角形どころか、六角形に丸太を削りだしている職人もいます。一日斫ってようやく一本か二本の角材ができます。次にそれを手斧で丹念に表面を削り、材として使用できる状態にしていきます。丸太の表皮をむき、槍鉋で削る作業もあって、気の遠くなるような工程もあります。他にものみで穴をあけ、切れ味抜群の鋸で切り、巨大な木の根を人力のみで槌で割ったり、30kgもある巨大な鉋で削ったりと、平安時代から飛鳥時代や天平時代から江戸時代へと受け継がれてきた伝統技術を目の前で見られる瞠目の貴重な大会でした。

 「全国削ろう会・信州伊那大会」の会場は、エレコム・ロジテックアリーナ(伊那市民体育館)と伊那市防災コミュニティセンターの3ヶ所、令和元(2019)年5月11日(土曜)、12日(日曜)に開かれました。開会式はそれぞれ関係者の挨拶と競技説明のあとに、私の鉋削りの実演が開会宣言となり、急遽靴下を脱ぎ、ズボンの裾をたくし上げ、裸足で真剣な鉋削りがオープニングとなりました。
 予選が始まると、参加者は真剣そのものです。アリーナの外では7~8本ほどのアカマツの丸太を鉞で斫る様子が、またその横では、直径1m以上、高さ2m以上もある巨大ケヤキの株を人力で割る実演が行われていました。ケヤキは根元付近のしかも捻じれに捻じれた、いかにも割れないぞと見て取れる悪相の材です。職人は周りに足場を組んで、巨大な鉄のくさびと木の楔を上から横から打ち込みながら、大きな木槌で割っています。「昔の人はこうやって作業をしていたのか」と妙に感心して見入っていると、「伊那市の市長じゃねえか?」と職人風情の親父から声をかけられました。「市長、おめえもやってみねえか?」慇懃いんぎんに断っていたものの、とうとう周りの拍手に後押しされて足場に登る羽目になりました。
 木槌を渡されると、槌のなんと重たいことか!20kgもあると言います。これを大上段に振り上げ、楔をめがけて振り下ろすのです。4、5回ほどであっさりと止めました。(この悪相ケヤキは、まる一日かけて割られたようです)
 アリーナでは建前の実演とむねの上から祝い餅が投げられ、木のおもちゃが展示され、木でできたストローや名刺が紹介されたりと、館内は木に係わる模様子ものがてんこ盛りでした。ともかく面白く、各ブースを興味津々で見て歩いていると、「伊那市の市長じゃねえか?」とまた声がかかります。巨大な鉋で幅の広いヒノキの材を削っているブースです。30cm以上の幅と厚さが7、8cm、重さを聞くと30kgあるというジャンボ鉋です。これで削ってみろと言うのです。ふたたび靴下を脱ぎ、ズボンの裾をたくし上げ挑戦です。鉋の引手の端を親指と人差し指でしっかり抑えながら手前に引くと、鉋の重さだけで削れてくるのです。いつのまにか周囲には職人の人だかりができています。「うまい!」、「あいつは本当に市長か?」、「前は(市長になる)大工か?」と、まんざらでもない賞賛の声が聞こえるなか集中して削り終えると大きな拍手に包まれました。
 奈良法隆寺の専属宮大工で、薬師寺金堂や西塔などを建てた伝説の宮大工、西岡にしおかつねかずのたった一人の内弟子の小川おがわ三夫みつお氏の講演会もあり、防災コミュニティセンターの大会議室は満員の立ち見で入りきらないほどの熱気に包まれました。「一尺は時代によって長さが違う」ことや、「飛鳥時代には五重塔が全国に70基ほど建てられ、図面もなく宮大工たちの叡智えいちで次々と建立された」話など興味の尽きない内容でした。
 5月11日(土曜)と12日(日曜)の2日間にわたって行われた「全国削ろう会・信州伊那大会」は、単に薄削りの技を競うだけではなく、「削る」に関わりを持つ職業のみなさんの参加も多くありました。鉋の刃を売る店、刃を研ぐ砥石を売る店、特殊な鉋、鑿、鋸、包丁、小刀、研ぎ師、目立て師、漆、桶、組木、竹細工、お六櫛、家具、カヌー、槍鉋など、店先で立ち止まると先に行けないような面白さばかりです。
 何より今回の「全国削ろう会・信州伊那大会」に求めたことは、子どもたちに伝統の技や技術を自分の目で見てほしいというものでした。こんな素敵な職業があることを知ってほしいと願ったからです。アリーナのなかはヒノキの削り華で、森にいるようなとてもいい香りです。小学生から中学生・高校生まで多くの参加があり、「僕は大工さんになる」という子どももいれば、「私は進路を木に係われる大工に決めました」という女子高生がいたり、初期の目的からしても十分な結果を出すことができました。高遠高校・辰野高校・赤穂高校・上伊那農業高校・長谷中学校・伊那小学校・伊那西小学校は学校単位で参加してくれ、なかでも伊那西高校は、準備から「書道パフォーマンス」、片付けまで係わってもらい、明るい生徒たちの立ち居振る舞いからは、伊那の明るい未来が伺えました。
 国・県・伊那市・企業・飲食店・ボランティアなど多くの支えがあっての「伊那大会」は、結果10,000人を優に超える参加者があって、すてきな記憶を残しながら終了したのです。
 

「清流」 まほら伊那市民大学 平成30年度修了記念文集 掲載

                              伊那市長 白鳥孝
 

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