令和8年6月議会定例会あいさつ
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更新日:2026年6月5日
本日は、令和8年6月市議会定例会をお願いいたしましたところ、議員各位におかれましては、ご出席を賜り誠にありがとうございます。定例会の開会にあたりまして、一言ごあいさつ申し上げます。
「五月雨をあつめて早し最上川」とは、松尾芭蕉が「奥の細道」で梅雨の長雨が一気に集まって激しく流れる最上川の勢いを詠んだ句として有名です。五月の雨と書いて五月雨(さみだれ)と読みますが、この五月雨(さみだれ)とは、旧暦の五月に降る雨のことで、現代での梅雨の雨を指します。まさに、この時期に降る雨のことであります。この季節は、新緑の緑も色を深め、植物の育ちもいよいよ早く、正しく成長の季節と言えます。
さて、わたくしは、昨年9月に市議会議員を辞職し、その後市内全域を歩き、また多くの方々にお会いすることができました。
中山間地域では、アカマツやカラマツなどの針葉樹とナラやクヌギなどの広葉樹が混在するこの伊那谷独特の里山と棚田が織りなす中、昔からの集落が点在し、懐かしさを感じる風景がありました。
また、広い水田が広がる農村地域では、住宅地と耕作地が分かれていて、効率的な農業がおこなわれており、手入れの行き届いた田園地帯は、正しく伊那市を象徴するような風景として見ることができました。
市街地周辺の地域では、農地と住宅地が混在し、かつて一面の耕作地であったところに、若者世代向けの新しい住宅が次々と建てられ、農地から住宅地へと移行する勢いのある様が見て取れました。
街の中心部では、住宅地として、戸建て住宅や集合住宅が集まり、生活するうえでの利便性も高く、住みやすさから人口が集中している地域でもあります。また、そうした街中には、町工場も点在し、暮らしと仕事が1つ場所にあるという中心部ならではの賑わいを見ることができました。
このように、伊那市といっても市域は広く、かつ、それぞれの地域の魅力を知ることができるとともに、市民の方々は、そこに住むことでの充実感や幸福感をもっていらっしゃいました。
しかし、その一方で、自分たちの住む地域がもっと良くなってほしいという思いも強く、そうした中で、課題も見えてきました。
中山間地域では、若者の流出などによる少子高齢化が加速し、地域の担い手が不足するなどから、インフラ整備をはじめ、地域を維持していくことへの懸念や足の確保などの不安をどう解消していくかという課題があります。
農村地域では、農業の担い手不足が進む中で、農業経営の難しさや農地や農業用水路といった施設維持の負担増など、コメの価格がよいと言われた昨年であっても不安の声は多く聞かれました。
新興住宅地では、次々と宅地化や住宅建設が進む中、自治会への未加入者が増え、役員のなり手不足や地域コミュニティの欠如といった課題がありました。また、小学校の学童クラブや保育園入所など子育て世代が抱えている課題を聞くこともできました。
中心市街地では、空き店舗が増えるとともに住民の転出も増え、空洞化が進んでいる中で、どのように街の活性化を図り、賑わいを取り戻していくかを模索している状況がありました。また住宅地にあっても、子どもたちが成長し、今は、親だけの世帯も増えてきており、中山間地域や農村地域同様に高齢化が進んでいるという状況がありました。
市内のどこにおいても住みやすく、暮らしやすい環境を維持していくことが望ましいわけであります。人口減少が進む中、すべての地域が同じように発展していくことは難しいわけですが、できるかぎり、均衡ある発展を目指していかなければ、伊那市全体の成長には結びついていきません。そうした中で、課題を整理しながら、今後の政策に活かしていく所存であります。
地域によって状況も異なり、課題も様々なものがあります。また、同じような状況にあっても、その地区によって抱える課題が、同じというわけではなく、それぞれに特有の異なるものもありました。
市民が行政に期待するのは、福祉や教育の充実、道路や公園の整備、中小企業支援、自然や環境の保全といった生活の質を向上させるための取り組みであります。誰でも同じような要望を持っていると思えるのですが、さらに細かく聞き取っていくと、個人によって抱える問題も異なっていました。市民のニーズも多様化し、隣人であっても、また同業者同士であっても異なってきている状況が見て取れます。
結果として、行政に求めるもの、すなわち行政需要も非常に多様化してきています。
かつては、伊那市民という一括りで行政サービスを提供することが当たり前であり、その枠からはみ出ることは個人の自由であっても、そうしたところへの行政サービスの提供は行わないということがありました。しかし、今日では、一人ひとりの思いを大切にした、行政サービスの提供をしていくことが求められるようになってきています。また、そうした取り組みこそが、各自治体の魅力度として測られ、時としてランキング付けさえ行われているのです。市民一人ひとりの思いを大切にした行政であることが求められ、その求めに応えていくことが基礎自治体の役割になってきています。
ただし、そこに財政的な負担増加の議論はありません。基礎自治体の財政状況は、景気動向や国の政策に左右され、常に安定した状況を維持するには、ある程度の財政余力を確保しておかなければなりません。つまり基金の充実や起債の削減等を図っていかなければならないのです。
多様化する社会の中で、市民ニーズに応えるため、多岐にわたる施策を充実させながら経費の節減に努め、健全な財政運営を進めることは、まさに綱渡りをするようなバランスが求められるところであります。
行政は、地方自治法第2条第14項にあるように、「最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」とされています。そのため、効率的な政策として、最大公約数の声を優先した施策にならざるを得ないのが実情であります。つまり、限られた財源の中で、市民の満足度をどのように高めていくかということが大きな課題になります。
その結果、市民が行政に求めるものと、行政が提供できるサービスとの間に乖離が生じてしまう場合も出てきます。また、行政に求められるものも多様化する中で、相反することを求められることもあり、その要望の全てに応えることは不可能といえます。
そうした乖離をできるだけ減らし、できるだけ多くの市民要望に応えられるようにするためには、市民の声を聞き、市民に施策について伝え、お互いに考えるという対話のできる関係性を築いていかなければなりません。
一方的に、行政から「こうなります」、「こうしてください」といった報告や通知だけでは、市民と行政との間に信頼関係は成り立ちません。
最大多数の声は何か。最大公約数の行政サービスは何かを把握し、その上で、最大多数の声から漏れたのはどのような声か、最大公約数の施策にならなかった事業は何かを見極め、丁寧に対応していかなければなりません。丁寧な対応とは、すなわち対話をしていくことであります。
そのためには、私自身できる限り多くの市民の皆さまにお会いし、できる限り多くの意見交換をし、行政サービスの充実につなげていく所存であります。
行政における課題は、社会の複雑化にともない、多様化・深刻化してきており、もつれた糸のように絡み合っています。そのため、粘り強く慎重に、かつ丁寧に取り組んでいかなければ、課題の解決に結びついていかないわけです。そうした姿勢を大切にして、伊那市発展のため、市民の皆さまの暮らしを豊かにするために日々、邁進してまいる所存であります。
議員各位におかれましても、この取り組みをご理解いただき、共に伊那市発展のため、歩みを同じくしていただきますようお願いいたします。
市民と対話できる関係性を保ちつつ、一人ひとりが輝き、「伊那市に住んで良かった」、「ここに暮らし続けたい」と思ってもらえるまちづくりを目指し、そのための政策実現に向けて取り組んでまいります。
次に、政策の方向性と取り組みについて述べさせていただきます。
はじめに子育て支援についてであります。
心身の健全な成長に寄与できる子育て環境を整備し、充実していくことが前提であり、その上で、保護者が子育てしやすいと実感できる伊那市を目指します。
学童クラブの充実を図り、児童発達支援センターや屋内遊び場の整備に取り組むとともに、保育園のキャンセル待ち児童解消を図ってまいります。
また、教育としては、学ぶことの喜びを得られることが、一人ひとりの学力を伸ばせることにつながることから、学校・家庭・地域が連携し、多様な学習環境の充実と支援体制の整備を図ってまいります。
教員の負担軽減を図り学力向上に取り組むとともに、フリースクール等との連携を図ってまいります。また、部活動の地域展開については、保護者や関係者の声を聞きながら進めてまいります。
市民一人ひとりが暮らしやすさを実感できるよう、女性の視点に立ったまちづくりを意識するとともに、市民誰もが安心して暮らせるよう、医療・介護等の充実を図り、必要な支援が確実に届くよう取り組んでまいります。
そのために、高齢者をはじめ運転免許を持たない方々の足の確保について充実していくとともに、医療介護人材の育成、各種支援制度の整備を図ってまいります。
また、日常生活を送る上での不安を減らし、日々の暮らしの安心を高めてまいります。AIの活用が大きな社会的な流れとなっている中、そうしたツールを活用して、市民が使いやすい行政サービスを提供するとともに、業務の効率化にも取り組んでまいります。
戸草ダム整備に向け、さらなる推進を図るとともに幹線道路から生活道路に至るまで、広く道路環境の整備を進めてまいります。また、自治会役員の負担軽減にも取り組んでまいります。
農林業や商工業といった地域の基盤となる産業が成長していかなければ、伊那市は発展していきません。そのために関係団体等との連携を密にするとともに必要な支援を充実させ、地域基盤の強化を図ってまいります。
農産物のブランド化の推進、中小企業や個人事業主への経営支援に取り組み、地域産業の底上げを図ってまいります。工業団地の整備については、市内や周辺自治体に事業所のある企業の、より一層の成長に寄与するべく、取り組んでまいります。事業所支援等に取り組む中で、必要に応じて企業誘致にも対応していく予定であります。
自然と暮らしが調和した景観は、ここに暮らすものにとっては、かけがえのない財産であり、他からはうらやむほどの魅力あふれるものであります。そうした豊かな自然と調和した暮らしやすい環境を維持していくように取り組んでまいります。
伊那市で大切にしている桜やバラなどの、どこにも負けない魅力ある花を大切にし、盛り上げていくとともに、農村景観の保全を図ってまいります。また、駅前再開発等に取り組むことで市街地の環境改善に取り組んでまいります。
以上が、任期4年の間に、市民の皆さまのため、そして伊那市がより暮らしやすいまちとなるために取り組んでいきたいと考えている政策であります。議員各位におかれましても、こうした伊那市の取り組みをご理解いただき、ご支援ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
伊那市が取り組んでいる施策は、往々にしてどこも類似したものになってしまいがちであり、そのサービス内容で他の自治体と競い合うのはまさしく体力勝負となってしまいかねません。
他の自治体にはない魅力ある施策を行うことで、伊那市をより住みやすいまちにしていかなければなりません。しかしそれは、市長一人だけでは限界があり、議員の皆様にもご協力いただき、共に考え、対話を重ね、市民にとって、伊那市にとってよりよいものを探していかなければなりません。どうぞご協力賜りますよう重ねてお願い申し上げます。
それでは次に、本定例会に提案いたします補正予算の内容につきまして、ご説明を申し上げます。
今年度の当初予算は、義務的経費や継続事業を中心とした「骨格予算」でございましたので、今回の補正予算をいわゆる「肉付け予算」として編成しました。
また、今回の補正予算は、一般会計、公有財産管理活用事業特別会計の補正をお願いするものでございますが、このうち一般会計の予算規模は、12億5,690万円の増額をお願いし、予算総額を383億7,290万円とするものでございます。
編成に当たりましては、公約として掲げたものや選挙期間中にいただきました、市民の皆様からの声もできるだけ反映させたものとなっています。
まず、市道における舗装の劣化、損傷箇所の修繕に関しましては、これまで多くの地元要望をいただいております。当初予算にも、これらへの対応分として予算を計上しているところでありますが、より多くの路線で、良好な舗装状態が実現できるよう、地元要望にお応えする分として1億円を、そのほか幹線道路分として5千万円を予算計上いたしました。財源として、交付税措置率の高い緊急自然災害防止対策事業債や、公共施設等管理基金を活用してまいります。このほか、市道球場回り線では、既に予算化しております歩道整備にあわせ、車道の舗装を修繕するための予算を計上しました。
また、子育て関連事業といたしましては、保育園入園のキャンセル待ちを解消するため、保育士の人件費に、正規職員2人分と会計年度任用職員2人分を増額したほか、学童クラブの充実として、富県小学校の特別学童クラブを夏休みから開設するための支援員、また、施設面で手狭となっており、小学校の特別教室の利用を調整しております伊那東小学校ほか3校の各学童クラブにおいて必要となる支援員の人件費を増額しております。
さらに、来年度が70回という節目になる伊那まつりについて、2日間の開催とし、充実を図るための予算を計上いたしました。
なお、この補正の機会だけではなく、市民の皆様の声を大切にしながら、その中で、真に必要な事業についての予算は、適時編成して参りたいと考えておりますので、議員各位のご理解をお願いいたします。
次に、一般会計における特徴的な事業について、分野ごとに触れさせていただきます。
はじめに、昨年度の申請によりまして、令和8年度、国の「地域未来交付金事業」として新規採択されました事業について予算化しております。
一つ目は、地域の資源を活用し、地場産業の高付加価値化を図る事業などで、例えば市の面積の8割以上を占める森林の整備に、住民や関係人口が関わっていく事業、文化財や観光看板のデジタル化などを行う事業です。
二つ目は「新しいまちづくり」の事業で、令和12年度に向けて伊那北駅周辺の整備などを実施していく計画となっています。今年度は、まちなかにWi-fiのアクセスポイントを設置するための調査などを計画しております。
三つ目は、公表しております地図情報に「道路台帳」と「都市計画情報」のデータを登録して市民や事業者の皆様に活用いただこうという事業であります。
次に「物価高対策」として、畜産農家への支援を予算化しておりますが、物価高対策につきましては、市民生活や企業の景況感、さらには国や県の動向を注視する中で、随時、必要な予算を提案してまいりたいと考えております。
次に「施設・設備の老朽化対策」として、消防団第3分団第1部、高遠町上山田にある詰所の改築、エレコム・ロジテックアリーナの外壁改修、伊那ニッパツスタジアムのラバーフェンス他の改修、温泉施設の内装改修、竜東地区及び山寺地区の水路補修、六道堤のしゅんせつ、横山地区のザゼンソウ群生地木道整備、仙流荘のボイラー更新ほかの予算を計上しております。
次に「産業用地」として、六道原工業団地第2期拡張事業につきまして、伊那市の企業、又は伊那市で既に事業展開している企業からの要望に応える内容ということもあり、企業留置に向けて用地を整備するべきと考え、工業団地に関連した市道や上下水道などを整備する費用を計上いたしました。
次に「照明のLED化事業」として、「みはらしファーム名人亭、麦の家」、「高遠町歴史博物館」、「地域間交流施設」、「長谷伝統文化等保存伝習施設」、「気の里ヘルスセンター栃の木」、「長谷デイサービスセンターやすらぎ」の各施設について予算を計上しております。
次に「行政の内部事務DX化」に向け、文書管理と勤怠管理のシステムを導入するとともに、関連文書等の電子決裁を導入する予算を計上しております。
このほか、将来的な火葬場の建て替えに向けた基本計画策定のための予算や伊那北駅前広場の整備に向けた基本設計の委託料、住宅の耐震改修工事を対象とした補助事業の増額などを予算化いたしました。
以上が、一般会計に計上いたしました主な事業でございます。
また、公有財産管理活用事業特別会計は、六道原工業団地第2期拡張事業の工事費5億2,764万円の増額補正をお願いしております。
以上、6月補正予算の特徴的な事業等について説明いたしました。
本定例会に提案しております議案は、一般案件1件、条例案件5件、予算案件2件の計8件でございます。詳細につきましては、担当部長からご説明申し上げますので、よろしくご審議いただきご議決賜りますようお願い申し上げまして、あいさつとさせていただきます。
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