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たき火通信 其の八十

更新日:2017年3月1日

猫の神様

 私たち日本人の宗教観は、あらゆる自然や物に神様がいて、それを畏(おそ)れ崇(あが)めるという原始信仰からはじまっています。アニミズムとも呼ばれ、「八百万(やおよろず)の神」に象徴されるように田んぼ・山・川・沼・石や、太陽・月・星・風・雷などの宇宙や気象分野にも、また馬・蚕・犬・蛇などにも神が宿っていると考えられてきました。面白いものでは便所の神様、竈(かまど)(台所)の神様、貧乏の神様もいて何でもありなのです。私が訪れた珍しい神社に「足神(あしがみ)神社」があります。文字通り「足」を祀(まつ)った神様です。信州と遠州とを結ぶ秋葉街道の青崩(あおくずれ)峠を下った浜松市水窪(みさくぼ)町にあります。足の病気の平癒(へいゆ)や道中の安全を願った神社です。「足が速くなりますように」との絵馬もありました。
 さて、伊那市にも猫を祀った面白い神様があります。猫神様は伊那市高遠町山室の川辺(かわべ)集落の裏山を少し登ったところにあります。細い急な山道をたどると、高さ25センチメートルほどの少し青みがかって、口元には紅が塗られデフォルメされた可愛らしい猫の石仏が座っています。地元の人に謂(いわ)れを尋ねましたが、いつ頃のものか、誰が作ったのか、なぜに猫なのかわかりません。同様に伊那市内には猫を祀った石仏が、西春近山本の公民館裏にもあります。こちらの猫はしっぽを巻いて眠っているようです。3体確認できました。いずれも可愛らしい写実的な石仏です。
 なぜ猫神様として祀ってあるのか推測すると、どうやら養蚕(ようさん)と関係がありそうです。伊那谷はかつてとても養蚕が盛んな地域でした。蚕はとてもデリケートで病気に弱く、万が一繭(まゆ)が取れないときなどは、一家が途方に暮れてしまいます。そして病気の原因の一つにはネズミの運ぶ病原菌も考えられました。猫はネズミを退治する大切な守り神として大切にされ、これらの地区では猫を懇(ねんご)ろに祀り、猫神様としたと考えてみました。
 平成29年3月 白鳥 孝

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