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たき火通信 其の五

更新日:2014年10月1日

「ためいけ」

羽広荘の少し南側の小さな沢を渡った山際に「カネーバの堤」があります。幼いころから何とも不思議な名前だと思っていましたが、「金鋳場(かねいば)」の転化したものと知ったのは随分と後のことです。江戸時代の文化年間からあったといわれるこの堤の近くでは、畑仕事に使う道具を作った鍛冶屋があったのか、もしかしたらお寺の鐘を作ったのか、遠い昔に興味がわいてきます。同様に富県北福地には「ヤクバーラ」と呼ばれる堤があります。漢字で書くと「役人原」です。その昔この堤の下には評定所があり、評定は嫌疑を避けて広い野原で行われたことからこうした名前がついたとのことです。「オイジゲリ」は大蛇ケ入、「ムジナガイリ」は狢ケ入、「ドウジ」は堂地と書くため池で、同じく北福地にあります。それぞれいわれは何でしょう。美篶笠原の「六道(ろくどう)の堤(つつみ)」は、高遠藩が藤沢川より引水して新田開墾したときの嘉永4年(1851年)に竣工しました。残雪のアルプスを背景に、桜の名所としてよく知られる撮影スポットです。野底洞堤(のそこほらつつみ)は、延宝年間の1673~1681年にかけて造られている古い堤です。このように旧伊那市内にはおおよそ50のため池が現存しています。美篶・手良・富県・西箕輪に多く、山麓の小さなため池を訪ねてみるのも楽しいものです。稲作も終わり、今年の役目を終えたため池は、ちょうど紅葉につつまれ、渡り鳥が遊ぶ静かな季節を迎えています。

平成22年10月 白鳥 孝


梨ノ木の堤

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