たき火通信　其の十五

　高遠町には今でも多くの祭りが残ります。だるま市、貴船神社の子供騎馬行列、そして有名な高遠城址公園のさくら祭り、二十二夜様、城下まつり、紅葉まつりと続いて、それこそ高遠はお祭りおまつりの一年です。9月の燈籠祭は、鉾持(ほこじ)神社の例大祭として行われる静かで幻想的なお祭りです。城下町らしく実にゆったりとした風情があります。道の両脇には、青竹に下がる赤いほおずき提灯が並び、印象的な赤い提灯のアーチをつくります。夕方、遠くから笛のしらべ、三味線の音、二胡の音色が聞こえてきます。町内ごとに伝わる高遠囃子(ばやし)の巡行です。秋風のわたる寂然とした空気のなかをやってきます。
　ところが、こんなすてきな燈籠祭にあまり人は訪れず、観光客もほとんどありません。私は10年以上も前から、このお祭りをもっと多くの人に知ってもらおうと、高遠の仲間や市の職員と誘客に取り組んでいます。昨年は間伐材を使った縁台をいくつか作って並べました。縁台に座って虫の音を聞きながら地酒を飲んで、高遠囃子(ばやし)を待ちます。今年は、もっとたくさんのみなさんに参加してもらおうと、こんな作戦をたてています。（1）ぜひ和服で参加（貸衣装あり）、（2）地元のお酒と料理を愉しむ、（3）高遠そばを食べる、などです。「おわら風の盆」はつとに知られています。燈籠祭はこれに負けない魅力と思索的な趣を持っています。9月23日、信州高遠町の燈籠祭、今年はぜひ参加してみてください。私も酒屋さんの前あたりで愉しんでいるかもしれません。

平成23年9月　白鳥　孝