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たき火通信 其の十七

更新日:2014年10月1日


夏にはコマクサの群生が小屋周辺を彩ります

石室

大正2年(1913)は、今から98年前になります。この年の8月、中央アルプス駒ヶ岳では、中箕輪尋常高等小学校の登山隊が暴風雨に遭い、引率の校長以下11人の死者が出ました。中央アルプス登山史上の大惨事です。この遭難の救助に奔走した地元内の萱(うちのかや)、大坊(だいぼう)のみなさんは、2年後の大正4年、山の安全を願い遭難現場に近い将棊頭山(しょうぎがしらやま)に「伊那小屋(現・西駒山荘)」を建てました。小屋は石室造りです。石室は現地の花崗岩(かこうがん)を割り、削りそれを積み上げて壁にし、その上に屋根を乗せたものです。石の大きさは大小あり、大きなものは、30×60×60cmもあります。風雪にもびくともしない堅牢(けんろう)な石室です。その石室の横に昭和52年に増築された木造の建物もすでに34年が経っています。屋根は撓(たわ)み、雨漏りがして、砂が小屋の中に流れ込んできたり、西駒山荘はもうすっかりくたびれた小屋になっています。そろそろ建て替えの時期です。はじめ現代の建築技術で新しい小屋を造ろうと思いましたが、この考えは止めることにしました。地元内の萱・大坊のみなさんからも、大学の教授からも、郷土史家のK先生からも、「先人の思いと汗、歴史的な建造物、日本の近代化遺産の観点からも石室をぜひ残してほしい」と、県内で最古の石室で、しかも現役で使われているのは極めて珍しいとも聞いています。およそ100年も昔に先人たちが、こつこつと岩を割って積み上げて建てた石室を、当時の建設の経緯を尊重しながら現役のまま使うことも私たちの務めなのかもしれません。

平成23年11月 白鳥 孝

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