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たき火通信 其の八十四

更新日:2017年7月1日

味噌(みそ)造り

 「手前味噌の話で恐縮ですが・・・」という表現があります。文字通り自慢や自画自賛をさします。自分で造った味噌は大層美味(おい)しく、ついつい自慢したがるものの喩(たとえ)として使われます。
 かつて多くの家では自家製の味噌を造っていました。今では自家製の味噌を造る家は、私の住む100戸ほどの中条集落でもほとんどありません。公民館行事や森林組合の山作業などに、わが家の自家製味噌を持っていくとみなさんから大層喜ばれました。キュウリや山ウドに味噌をつけて食べたり、味噌汁など作ると「うちも以前は味噌を造っていたんだ」、「うちの味噌が一番だね」などの味噌自慢がしきりです。
 我が家は昔から味噌造りをしてきました。大きな釜とすり潰(つぶ)す機械と、薪(まき)の準備をするのは私の仕事です。火を焚きつけるのも私の役割です。季節は春、前年に収穫した大豆をよく洗い、一晩水に浸してから大きな釜で煮立てます。ふっくらと煮えた香しい大豆は専用の機械を通してミンチ状にすり潰します。そこに塩と米麹(こめこうじ)を既定の量でまんべんなく混ぜてから、空気がはいらないように手でしっかり押しつけながらプラスチックの樽(たる)に詰めていきます。一年後に口にできる味噌造りはとても手間のかかる仕事ですが、味噌汁や味噌漬け、酢味噌和(あ)えなどの料理用に仕込みます。家族総出の年中行事として懐かしい記憶に残る方も多いことと思います。
 そんな話を伊那市観光株式会社の山小屋担当の社員と話をしていた時のことです。西駒山荘の宮下氏、こもれび山荘の竹元氏、そして塩見小屋の岡氏の管理人たちです。「自分たちも山小屋で味噌を使っているから、ぜひとも自分たちで造ったのを出したい」と。結局わが家で家内の指導よろしく管理人総出の自家製の味噌造りを実施することになりました。60キログラムの大豆を2つの大釜で炊きそれぞれ初めての楽しい作業です。来年は泊りがけでやりたいと、まだ味を確認していない味噌味もさることながら、わが家の味噌が伝播(でんぱ)していく様子が嬉しくなります。

 平成29年7月 白鳥 孝

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