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たき火通信 其の二十一

更新日:2014年10月1日


脱皮したばかりの白いカニは子どもたちの疑問を引き出します

サワガニ

日脚(ひあし)が延びてくると、子どもたちと連れだって、里山の小さな沢に行ってサワガニを探します。手を真っ赤にして、お尻を濡(ぬ)らして、石をひっくり返し夢中になってサワガニをつかまえます。1時間もするとバケツのなかは、50匹ほどのサワガニでいっぱいです。サワサワ、シャカシャカと命の喧騒(けんそう)にあふれます。半分は逃がしてやるとして、何匹くらいあれば春の味を楽しめるのかと、じっとバケツのなかをのぞきこむ私を見て、子どもたちは心配そうに言います。「カニさん食べちゃうの?」「そう、から揚げにすると美味しいよ」ここで大切なのは、かわいそうだから逃がしてあげようなどと、上辺(うわべ)の教育をしてはいけないことです。自然のなかでは、何が食べられるのか、どの季節のサワガニが食べられないのか、小さなカニはなぜ逃がしてあげるのか。春のサワガニを通じて、自然の恵みに感謝する気持ちを子どもたちに伝えるのです。あえてサワガニを食べなければ生きられない時代ではないけれど、失いかけた智恵と経験を伝えたいと願うのです。子どもたちは、サワガニ採りを通じて、カニの命に思いを巡らし悩みます。生殺与奪(せいさつよだつ)のキーマンであることを自覚します。今の時代、スーパーの食品は、多くは最終工程の状態で売られています。育てる、処理をする、運ぶ、売る、食べる、の連鎖が分業化されていて、どこに感謝をしていいのかわかりません。自然のなかにいて、サワガニを捕まえて帰り、家族にほめられ、みんなで料理をして、祖父母から昔話を聞いて、みんなで食べる。そんな明快な日常が随分少なくなってきた気がします。

平成24年3月 白鳥 孝

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