伊那市

たき火通信 其の八十六

更新日:2017年9月1日

天然カラマツ

 春、三峰川を遡行(そこう)していたときのことです。源流部に行くに従って雪渓が狭い谷を埋め、雪崩の危険と冷たい雨に打たれ、エスケープすることにしました。岳沢(だけさわ)の少し上流から丸山越えの原生林を登り、ガレ場を渡って落石の多い沢を下る、熟達者しか知らないルートです。スリップと落石に注意をしながら岩場を越えたときのことです。ふた抱えもある巨木が倒れて岩に引っかかっていました。幹は裂け巨木の内部まで見えます。その色は動脈から出る血をさらに濃くしたような赤、そぼ降るに濡れ霧のなかで不気味な生き物のように見えました。天然カラマツです。
 カラマツは日本の針葉樹のなかで唯一落葉する樹種です。漢字では「落葉松」と書かれます。一般的なカラマツは戦後、北海道、長野県、岩手県などに植林されましたが、太古からの天然カラマツとなると極めて貴重な存在となります。長野県内では北アルプスの上高地周辺、南アルプスの鋸岳(のこぎりだけ)下部、三峰川上流部くらいしか見聞しません。南アルプス林道を市営バスで登っていくと、はるか下を流れる戸台川をはさんで、対岸に鋸岳を見ることができます。山巓(さんてん)から落ちる顕著(けんちょ)な沢が2本確認でき、左が角兵衛沢(かくべいざわ)、その右に熊穴沢(くまあなざわ)、それぞれ沢に沿って列状の針葉樹林が見えます。これが本州で最大の天然カラマツの原生林と称される群生地です。その他にも比較的気軽に見ることができるのが、権兵衛峠から南に徒歩30分ほどのところにある「ジャンカラ」とよばれる天然カラマツです。正式には「ジャンボカラマツ」で、その巨大さ雄姿には度肝を抜かれます。幹周4メートル、高さ35メートル、樹齢250年と言われる日本一大きなカラマツです。
 天然カラマツ材は現在ではほとんど手に入りません。一説には1立米(りゅうべい)(1メートル×1メートル×1メートル)が100万円以上とも言われる超貴重なもののようです。この貴重な材を使って小さくてもいいから何か製品が作れないかと研究が始まりました。伊那市産の天然カラマツの製品化です。
 
 平成29年9月 白鳥 孝

ジャンボカラマツ まだ柵のない頃の「ジャンボカラマツ」

マツボックリ

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