たき火通信　其の百

　伊那市の最南端の山は、標高3,047ｍの南アルプス塩見岳（厳密には塩見岳西の本谷山）です。東端の山は同じく東駒ヶ岳（甲斐駒ヶ岳）2,967ｍ、西端の山は中央アルプスの将棊頭山2,730ｍ、そして最北端の山が諏訪市と境を接する守屋山1,650ｍです。
　この守屋山は古くから信仰の山として崇められてきました。御柱で有名な諏訪大社上社本宮は、守屋山北東の麓に社があります。その本宮には本殿がなく、守屋山そのものが諏訪大社上社本宮の御神体とされています。伊那や高遠側でも雨乞いの山としての守屋山であり、守屋の雷はおっかなく桁が違うなどと、一目も二目もおかれてきた山なのです。
　それではなぜ守屋山はほかと峻別される山なのか？歴史・地質的に何が異なるのか？諏訪大社の御神体とまで言われる所以は何なのか？といろいろ考えるにつけ、事実だけを敷衍すれば、ひとつには世界的大断層の中央構造線が守屋山のすぐ東脇を南北に走り、諏訪盆地の南端で糸魚川―静岡構造線が交叉して、さらに糸―静線に沿って大地溝帯（フォッサマグナ）が存在していることでしょうか。つまりこの位置にある守屋山一帯は、日本列島の要であり、日本列島の成り立ちを語る上において、外すことのできない重要な存在なのです。
　登山は比較的やさしく、初心者でも心配なく登ることができます。バリエーションに富む立石ルートは、1,631ｍの東峰まで1時間30分程で、さらに一等三角点のある1,650ｍの西峰まで約20分、どちらの山頂からも360°の大展望が待っています。南アルプスの仙丈ヶ岳、北岳、東駒ヶ岳、塩見岳、赤石岳・・・。八ヶ岳連峰は全山が一望です。秩父の山々も浅間も、また御嶽山、乗鞍岳まで遠望できます。中央アルプスも北の経ヶ岳から遠く恵那山まで、北アルプスも槍ヶ岳、穂高岳、白馬岳などの名山が連なります。守屋山からは、日本百名山のうち34座から36座の山が同定できると言われています。