たき火通信 其の五十四
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更新日:2015年1月1日
世界でただひとつの昆虫食
ハチノコやイナゴ、バッタ、蚕(かいこ)の蛹(さなぎ)、カミキリムシなど、昆虫の幼虫や蛹は、伊那のみならず世界各地で食べられてきました。アジア・アフリカ・南北アメリカなどでも、昆虫を食料としてきました。また近年は世界的な食糧危機解決の手立てとして昆虫に活路を求め、東南アジアではコオロギなどの養殖が始まっています。
伊那地方でも、ハチノコ、イナゴなどの昆虫は古くから食べ習わし、スローフードとしての食文化をつくってきました。ところが、世界的に食べられている昆虫食文化のなかでも、伊那地方にしかない独自の昆虫食があります。それは「ざざむし」です。ほとんどの昆虫食の対象が陸上昆虫であるのに、「ざざむし」は水生昆虫です。
「ざざむし」は、天竜川や支流の三峰川、小黒川などの清流に生息する、トビケラ・カワゲラ・マゴタロウムシなどの水生昆虫を総称します。川が「ざぁざぁ」、「ざざー」と流れる浅瀬で採れるから「ざざむし」と呼ばれます。冬の寒さの厳しい時季に「ざざむし漁」は行われます。多くは天竜川と三峰川の合流点下流が多く、12月から2月末の真冬が一番脂がのって美味しいといわれます。「四手網(よつであみ)」と長靴の底には「かんじき」と呼ばれる金属製の治具を着け、浅瀬の石を足で動かしながら「ざざむし漁」を行います。石の裏に張り付いていたトビケラは、流れと一緒に四手網に誘い込まれます。そしてこれを佃煮にしたものが郷土料理の珍味、貴重な「ざざむし」です。
世界中どこにもない、伊那でしか見られない漁法が「ざざむし漁」で、昆虫食の中でも清流に棲む水生昆虫を食べるのが、世界でただひとつ、この伊那地方なのです。
平成27年1月 白鳥 孝
「カワゲラ」
現在は「トビケラ」の幼虫がざざむしの主流です。かつては「カワゲラ」も主役でした。
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