たき火通信 其の百七
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更新日:2019年8月30日
堀内敬三と伊那
伊那市にゆかりのある音楽家と言えば、日本の音楽教育の基礎 を創った伊沢修二(1851~1917)や、名曲「水色のワルツ」・「オ ペラ春香」などを作曲した高木東六(1904~2006)がいます。 大正から昭和にかけて活躍した、音楽界のスーパースター堀内敬三 (1897~1983)も伊那にゆかりのある音楽家です。ジャズから 映画音楽、西洋音楽の訳詞、作詞、作曲など多彩な才能を発揮しま した。映画「蒲田行進曲」の主題歌の作詞や慶應義塾大学の応援 歌「若き血」も堀内の作詞作曲です。
堀内敬三の父は堀内伊太郎と言い、現在の伊那市美篶青島で 代々庄屋をつとめた家柄でした。その後伊太郎は上京し、「浅田 飴」本舗をおこしています。「浅田飴」は堀内敬三の兄が継ぎ、敬 三は音楽の世界に入っていきます。堀内敬三は幼い頃から多感 な青年期にかけて伊那市美篶青島に来ています。きっと青島の 家で春・夏から秋冬まで、何度か季節を過ごしているものと思わ れます。 「家路」はドボルザーク作曲の「新世界より」を敬三が訳した曲で す。歌詞は「遠き山に日は落ちて 星は空をちりばめぬ 今日のわ ざをなし終えて 心かろくやすらえば 風は涼しこの夕べ いざ や楽しきまどいせん」と誰もがくちずさむあの曲です。私は予て からこの曲は敬三が伊那の風景をイメージして作ったと考えて います。歌詞の「遠き山」とは日の沈みゆく西駒ヶ岳の峰々を、「今日のわざをなし終えて 心かろくやすらえば風は涼し・・・」の くだりは、「一日の野良仕事を終えて家に帰り、夕暮れに三峰川 を渡る風の涼しさを楽しむ満足げな様子」と思い描くのです。
同じくヘイス作曲、堀内敬三作詞の「冬の星座」にも、敬三が伊 那の夜空を仰ぐ様子がしのばれます。「木枯らしとだえて冴ゆる 空より 地上に降り敷く奇しき光よ・・・きらめき揺れつつ星座は めぐる・・・」、きっと冬の夜に伊那で見た、銀河やオリオン、昴、北 斗の星座たちに広大無辺な宇宙を憧憬しながら歌詞を作り出し たのではないかと想像するのです。天才的な音楽家であり博学 の文化人の堀内敬三、その感性の遺伝子にはきっと伊那の四季 が濃く深く存在していたと考えたくなります。
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