たき火通信 其の二十八
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更新日:2014年10月1日
通称「だいこん畑」は一面のそば畑です
信州そば発祥の地
もう随分と昔の話ですが、結婚した年の冬に家内の実家に行った時のことです。とても美味しい、というより珍しいお蕎麦(そば)を食べさせてもらいました。珍しいのは蕎麦つゆで、竹のおろし金でおろした大根を、さらしで絞り、そこに焼いた味噌(みそ)を溶いて蕎麦つゆにします。親戚の叔父さんが打ってくれた手打ちの蕎麦は、大根の辛さと、焼いた味噌の風味と蕎麦のつくりだす素朴な味に、おおいに感動したのでした。今では、この種の蕎麦が「おしぼり蕎麦」と知りましたが、こんな美味しいお蕎麦が伊那の農家に伝わっていたことも驚きでした。伊那は信州そば発祥の地として知られています。今から1300年ほど前の奈良時代、「役小角(えんのおずぬ)」が修験の途中、内の萱の村人に伝えたという「行者(ぎょうじゃ)そば」は広く信州に流布しました。そして江戸時代のはじめ、高遠藩主の保科正之(ほしなまさゆき)公が将軍家に献上し、また正之公もたいそう愛(め)でたという「高遠そば」は、そば切きり発祥の地が伊那であることを広く全国に知らせています。正之公は最上藩へ、そして会津藩へ転封(てんぽう)した折にも、そば職人を引き連れそば文化を伝えています。400年経った今でも、会津地方には辛み大根の絞り汁に焼き味噌を溶いた「高遠そば」が脈々と生き続いています。この秋、伊那市内では、そば祭りが行われます。伊那市内の萱の「行者そば祭り」、みはらしファームの「信州伊那新そばまつり」、高遠城址公園の「高遠そば新そばまつり」と「山麓一(さんろくいち)の麺街道フェスタ」、そのほかにも、高遠弥勒(みろく)や長谷非持山(ひじやま)などの地域のそば祭りも催されます。それぞれが、信州そば発祥の地のプライドを掲げての開催です。
平成24年10月 白鳥 孝
一面に広がるそば畑
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