たき火通信 其の百五十六
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更新日:2023年8月23日
西駒んボッカ・雲上から環境を考える
日本で現役最古の石室を暖める薪とストーブ
ボッカは漢字で書くと「歩荷」。背負子などに荷物を積み上げて、山小屋などに荷揚げをすることや、それを職業としている人を指す言葉です。今ではヘリコプターで荷物は運びますが、かつては歩荷が主流で、一度に運ぶ荷物の量は数10kg、「強力」と呼ばれる歩荷となると100kgを越える荷物を運んだようです。
平成25年(2013年)中央アルプス将棊頭山(標高2,730m)直下にある西駒山荘の改築のとき、「100年以上の歴史をもつ、石室の土間に敷くレンガを人力で運び上げよう」と始めたのが「西駒んボッカ」です。「参加者から参加費を頂き、協賛企業を募って運営費に充て、前夜祭では地元の皆さんと交流して・・・」などと話すと、「そもそもお金を出して、レンガを運ぶような奇特な人がいるのか?」と懐疑的な意見が大半でした。定員100名で、西駒んボッカの募集を始めると、たちまち定員は埋まり、初回は140名近い参加者が集まりました。
鳩吹公園から西駒山荘までは距離にして11.6km、標高差は1,750mです。普通の登山者がリュックサックを背負って歩けば、おおよそ6時間~7時間はかかる行程です。それを歩荷大会のトップランナーは、2時間以内で駆け上がるのです。驚異的な速さです。その後参加者は年々増え続け、当初予定していた約700個(総量1,750kg)のレンガは、4年間で持ち上げてしまいました。これでレンガの歩荷大会は終了と考えていたところ、「山小屋に薪ストーブが入り、そこで使う薪を運ぶ歩荷をしたい。再生可能エネルギーの山小屋にしよう」と言うことで、第5回の平成29年(2017年)から薪を運ぶレースへと変わり、今では薪3kgもしくは薪15kgを運ぶ2部門で、歩荷大会が継続しています。今年の参加者は約180名、地元山岳会、信州大学学生、ドクター、行政関係者などのボランティアスタッフ約60名に支えられて開催されます。運営に必要な資金も参加費だけでは足りません。地元企業を中心に40数社から協賛をいただいて運営費に充てています。
今年の9月で第9回になります。自分の運んだこの薪で誰かが笑顔になるだろうと思う参加者、誰かが運んでくれた薪に感謝して暖をとる登山者。そこには無償の温かな交感が存在します。CO₂削減やエネルギーの循環がさり気なく行われているのが「中央アルプス・西駒んボッカ」です。
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