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たき火通信 其の百七十四

ページID:699192766

更新日:2025年2月19日

空飛ぶ狛犬こまいぬ


川田神社にある小松寅吉作の狛犬

伊那市うら出身の石工に「小松こまつへい」がいます。文化元年(1804年)の生まれで、明治21年(1888年)に没していますから、江戸から明治に移った激動の時代に生きた石工です。小松利平は長谷の浦から、優れた技術を持つ旅石工として高遠藩を出ます。そして福島県石川郡浅川町あさかわまちに住み着きました。理由はこの地からは良質な凝灰岩ぎょうかいがんの「貴作きざくいし」が採れたからと言われています。白河市では「白河石」と呼ばれています。そして慶応2年(1866年)、利平の小松家に養子に入った「小松こまつとらきち」も希代の名工でした。明治維新真っただなかに生きた寅吉は、近在近郊でその名を知られる石工でした。それからもう一人、寅吉の弟子として高い技術を身に着けた「小林こばやし和平わへい」(明治14年生まれ)です。

小松利平、小松寅吉、小林和平は3大名工と呼ばれ、利平は江戸時代に耕地の少ない高遠藩から、のみ玄翁げんのうを担いで旅石工として全国に出稼ぎに出たのです。なかには利平のようにそのまま脱藩した石工もいたことでしょう。

利平、寅吉、和平に共通している他にない技についてお話します。この地方では加工しやすく摩耗しにくい「福貴作石」が産出されました。この石を人力と鑿だけで彫ったのが「空飛ぶ狛犬」、「飛翔ひしょう獅子しし」です。この空飛ぶ狛犬は私たちの狛犬に抱くイメージを覆します。そもそも狛犬は神社に口を開けた「阿像あぞう」と口を閉じた「吽像うんぞう」が蹲踞そんきょしているのが一般的で、神域を守る霊獣です。浅川町や白河の狛犬は、まるで空を飛んでいるような躍動感と、独創的なポーズで飛び回るかのようなデザインです。

この地方の冬は寒くまた雪も多く降ります。福貴作石で作られた石造は、水が溜まらないよう凍らぬよう設計されて、風土にあった高い知識に裏づけされた構造になっています。なかでも、私の目を引いて離さない空飛ぶ狛犬に、小林和平の作品があります。母獅子の周りには小さな獅子が飛び回る作品がいくつもあります。

和平は生まれて間もない幼子おさなごふたりを相次いで亡くし、ただひとり成長した娘も二十歳前に失っています。和平は空飛ぶ狛犬に、亡くした3人の子どもにいつでも会えるように彫ったのかもしれません。

お問い合わせ

伊那市役所 総務部 秘書広報課 広報広聴係

電話:0265-78-4111(内線2131 2132)

ファクス:0265-74-1250

メールアドレス:his@inacity.jp

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