たき火通信 其の九十一
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更新日:2018年2月1日
熊長(くまちょう)さの鉄砲
南アルプスの北沢峠から山梨県側に15分ほど下ったところに「長衛小屋(ちょうえごや)」があります。小屋は南アルプスの開拓者として知られる竹澤長衛(たけざわちょうえ)(1889年―1958年)が建てたもので、シラビソ・トウヒ・ダケカンバなどの原生林に囲まれています。長衛小屋は伊那市長谷出身の竹澤長衛が建てましたが、わけあって13年ほど前に、当時の山梨県芦安村(あしやすむら)(現・南アルプス市)に売られてしまいました。
話は、南アルプス市が老朽化した長衛小屋を建て替える時に、床下から油紙に包まれた銃が出てきたところから始まります。2011年11月に床下から銃と錆(さ)びた短刀が見つかり、関係者はすぐに山梨県警に届けたそうです。南アルプス市には知人の塩沢久仙(しおざわひさのり)さん(故人)がいて、「出てきたのは銃身の短い村田銃(むらたじゅう)、長衛のものに間違いない。何とか県警から検察に行く前に動いた方がいい」との電話が入りました。すぐに山梨県警にお願いに行きましたが、「まだじゅうぶん使用できるものであり、返すわけにはいかない」と取り付く島もありません。国会議員、山梨県議会議員、当時の山梨県副知事などに会い、あらゆるチャンネルと手蔓(てづる)を駆使して交渉を試みましたが埒(らち)があきません。徒(いたずら)に時間が過ぎていき、銃は検察の手に渡ってしまい、いつスクラップにされるかわかりません。いかに歴史的な価値のある銃であることを伝えに、長谷総合支所長にも甲府地方検察庁まで何度も足を運んでもらいました。
竹澤長衛は熊打ちの名手で「熊長さ」とも呼ばれるほどでした。当時一緒に雪の南アルプスに同行した矢澤章一(やざわしょういち)さんにも、銃の特徴(藪(やぶ)のなかでも持ち歩きし易いように銃身を短く切ってある)を証人として話してもらいました。法務大臣に書類を出し、検察庁には嘆願にも似た手紙も書きました。
2017年12月甲府地方検察庁から突然の連絡です。「法務大臣から許可が下りた。すぐに貰(もら)い受けにくるように」6年間の願いが叶(かな)った瞬間です。どこかで市民の皆様に披露します。
平成30年2月 白鳥 孝
竹澤長衛のものといわれる鉄砲
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