たき火通信 其の百二十五
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更新日:2020年12月23日
顔の見える関係
迫り来る濁流
朝、いつもの時間に出勤すると、「美篶下県(みすずしもがた)あたりの三峰川護岸が欠けている」との連絡を受けました。「5m程欠けていて、さらに洗堀(せんくつ)は進んでいる」との一報のあと、職員が現地に向かうと「洗堀は長さ40mに達し、さらに護岸の崩落は進み危険な状態である」との報告に慄然(りつぜん)としました。昨年の台風19号被害で千曲川の堤防が破提し、長野市周辺の家屋(かおく)が次々と濁流にのまれる様が頭を過ったからです。6月30日から7月初旬にかけて伊那谷では梅雨前線豪雨で、天竜川や三峰川の水位はグングン上昇していました。
間髪(かんはつ)入れず国土交通省天竜川上流河川事務所に連絡を入れたのが7時45分。11時には大型重機や大型クレーンが運ばれ、トラックで運ばれるテトラポットが次々と濁流に投入されていきました。市役所では職員がナイスロードを通行止めにしたり、田園地帯の市道の交通を誘導したりと懸命の対応でした。
「三峰川堤防の破堤は何としても阻止(そし)する」と、7月1日の朝から伊那市内の建設業組合の皆さんが集まりました。それぞれ現場の仕事を止めて、市内全ての業者が来てくれたのです。大型バックホーが10台増水した濁流のなかで動き、夜間も続く作業のために投光車が3台運ばれ、盛り土用の土砂は数十台ものダンプカーが運び続けました。それから3日3晩、昼夜を分(わ)かたず建設業者の皆さんと国土交通省は連携して作業に当たってくれました。圧巻は美和ダムの放流を絞り、僅か数時間の間に大型バックホーが増水の河川に入り「瀬替(せが)え」をしたのです。ちょうど洗堀箇所は「澪筋(みおすじ)(川の流れ)」が直(じか)に当たる場所で、その流れを強制的に変える荒業(あらわざ)です。
4日目の7月8日の朝、仮堤防が完成した直後に大雨特別警報が出されました。まさに危機一髪、首の皮一枚で助かりました。これも偏(ひとえ)に「建設業者の地域を守る思い」と、普段から国・県・市と「顔の見える関係」があったからこそと感謝するのです。それにしても、夜間の雨のなか、投光車に照らされながら黙々と働く作業員には、つくづく頭が下がりました。
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