たき火通信 其の百六十九
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更新日:2024年9月25日
夕顔
50cmもある2本目のユウガオ
家の周りの草刈りをして、近所の見通しの悪い交差点の草を刈っていると、「おーい、おーい」と声が聞こえました。ビーバーの音で声はよく聞こえず、近くまで来て気がつくと近所のおじさんでした。「たかしちゃ、久しぶりじゃんか」、「おじいさんは元気にしているかい?」とひとしきり世間話を話した後、「そうだ、ユウガオを食べんか?」と言って軽トラに戻っていきました。そして大きなユウガオを一本置いていきました。ユウガオは遠い昔の干瓢づくりを思いださせます。
私が小学低学年の、まだ祖母が健在な頃のこと。夏の終わりのそろそろコオロギやキリギリスが鳴き出す季節になると、蔵の軒下には何本ものユウガオがありました。祖母は家の横を流れる小川できれいに洗い、包丁で2cmほどの幅で輪切りにしてから、専用の皮むき器でシュルシュルと薄く剥いていきます。山のように剥かれた白い帯状のユウガオは、物干し竿にすだれ状に掛けて乾かします。どこの家にも見られ、この季節の歳時記のようでした。
さてさて、この頂いたユウガオはどうやって食べようか?カボチャと一緒に味噌汁か、ナスとユウガオの味噌炒めくらいしか思い浮かびません。父と二人では到底食べきれません。近所の人が来たときに「ユウガオはある?」と聞くと、「うちにもあるから、よかったら持ってこようか?」と。
秋のきのこシーズンになると、玄関先にショウゲンジ(コムソウ)やジコボウなどが置いてあることがあります。きっとあの人だろうと連絡をすると「いっぱい採れたからおじいさんに食べさせてくれ」といいます。ナスやキュウリも「沢山なったから貰ってくれ」と頂くこともあります。春にはコシアブラやタケノコもあります。伊那の人々はそのように、おすそ分けをし合いながら暮らしてきました。素敵な文化です。
何日もかけて食べ続けたユウガオは、10日も経つと皮が固くなりました。味噌汁の具にも歯ごたえが生まれます。父はもう箸がでません。そんなある日、例の近所のおじさんがやって来ました。「今朝とったやつを持ってきたで」と、大きなユウガオを玄関に置いて行きました。
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