たき火通信 其の五十六
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更新日:2015年3月1日
樹のおしゃべり
さくらの開花が話題になってくるこの頃は、ネコヤナギやアセビ、マンサク、キブシ、トサミズキなどの早春の木を除けば、まだ落葉広葉樹の木々は眠たそうです。芽吹きの準備をしっかりしているのでしょうが、落葉の秋から春の芽吹きまでは、葉の落ちたそれぞれの樹形を見るのには都合のよい時期です。
経ヶ岳山麓にはじまり、信州大学農学部の南を流れ、伊那小学校の北側から街中を通って、入舟で天竜川に合流する戸谷(鳥谷)(とや)川があります。この川の上流に種類の異なる樹がひとかたまりに生えているところがあります。小さなコブシが2本、その横からニセアカシアの大小の成木が7本、そしてケヤキが2本です。一番太いケヤキは樹齢50年ほどでしょうか。初夏、ニセアカシアの白い花が終わって、それぞれが深い緑の葉に包まれてくると、遠目に、11本の木はまるで一本の大樹のように見えます。
葉を落としているこの時期、11本の木はよく観察できます。北へ大きく枝を張るケヤキは、まんなかの若いケヤキを慈しむように支えているかのようです。南と西にある7本のニセアカシアは、ケヤキに遠慮して枝を伸ばしています。花の時期を過ぎるとコブシはどこにいるのかわかりません。彼らにはどことなく「自分だけよければ・・・」という主張が見られません。互いに助け合うかのような、兄弟のような、しかも冬枯れに凛(りん)とした整然さが感じられます。
樹は動物や鳥のように移動することはできません。生(せい)を受けた所が、生きる場所なのです。彼らは譲り合って、仲違いもせず、助け合って、もしかしたら会話をしながら生きているのかもしれない、などと思えてきます。
平成27年3月 白鳥 孝
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