たき火通信 其の十四
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更新日:2014年10月1日
エンビセンノウ
クガイソウ
お盆花
どの家もそうだったのかわかりませんが、小中学生の頃は盆花を取りに行くのか毎年の仕事でした。弟と連れだって行くこともありましたが、一人で行くことが多かった気がします。当時はお盆が明けると学校の夏休みも終わりでした。盆踊りや花火の楽しみと、宿題が残る心配の、何となく寂しさが混ざり合ったのがお盆花を取りに行く頃の記憶です。雄大な入道雲の夏空の下で、喧(やかま)しいほどの蝉の声を聞きながら、草いきれの山に分け入って花を探します。私にとってもっとも上等な花はキキョウでした。オレンジ色のコオニユリも時々見つけることができました。オミナエシ・フジバカマ・ワレモコウ・カワラナデシコ・チダケサシなどを探しながら場所を移します。今では珍しいサワギキョウはごく普通に取りきれないほどありました。エンビセンノウもごくまれに見た記憶があります。林縁の少し日陰に咲くフシグロセンノウは、どうしたことか手折った記憶がありません。子ども心にどことなく暗さを感じたのか、あれほど鮮やかなオレンジなのに家に持ち帰らなかったのです。家に帰ると盆棚をつくり、ススキの茣蓙(ござ)を編んで、キュウリとナスにマッチ棒をさして動物の形をつくる。そこまでが子どもの仕事でした。秋思をそこかしこに感じながら、両手いっぱいお盆花を取ることのできた当時は、ずいぶんと贅沢(ぜいたく)な自然と時間があったように思われます。
平成23年8月 白鳥 孝
サワギキョウ
フシグロセンノウ
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