たき火通信 其の百六十一
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更新日:2024年1月24日
手紙
自筆の手紙は温かい…。
保育園やいきいき交流施設(公民館)などの竣工式の際には、「市長の揮毫した看板を掛けたいので、ぜひ筆で書いてほしい」と頼まれることがあります。あるいは色紙に市長の好きな言葉や漢字を書いてほしいと頼まれることも。仕事柄、字を書くことを依頼されることが多いのですが、私はその都度丁寧にお断りしています。「それぞれの地域には、素晴らしい字を書く方がおられる筈だから、ぜひそうした方に依頼されたらいかがでしょうか?」と。
民間企業に勤めていた頃、上司からの指示で書類を作成し提出したことがあります。「よく書けている。内容も良い。それではこれを清書するように」と言われたのですが、私としては清書のつもりでした。生来、字の下手な私をその呪縛から解いてくれたのが、ワードや一太郎などのソフトウェアの登場でした。ワープロソフトは実に有為な道具で、自筆で書く書類は減り、安心な日々を過ごせることになったのです。
それから幾星霜、市役所に入った頃に、情報通信大手の株式会社インテックの中尾哲雄社長(当時)の講演会を伊那市役所で開きました。演題は「インターネット社会の未来」で、ICT技術の研究開発やソフトウェア開発等、これからの日本はどのように発展し、時代はどう変化するのかというような、時代の最先端技術の話を、トップ企業の社長からお聞きするのですから、会場は熱気に包まれていました。
講演が終わり、参加者からの質問タイムに入った時です。「これからの時代、ネット社会のなかで、mailとかSNSが世界を席巻する時代がやってくると思いますが、中尾先生はさらにどのような戦略をお考えですか?」との質問がありました。暫く考えた後、「僕の大切にしたいことは、自分で書く手紙が一番好きですから、これからはそんな時代が来てほしいですね」と話しました。会場は少し驚きの空気に変わりました。中尾社長は手紙の持つ温雅なたしなみや、手紙を自筆しながら相手を思う気持ちなどに触れ、聞いている私たちは、「むべなるかな」と思えてきたのです。
爾来、私も「手紙は心だ」と、極力自筆で書く努力をしています。
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