たき火通信 其の八十五
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更新日:2017年8月1日
真夏の花見
5月の連休が明け、田植えが終わり、梅雨の6月、7月ともなれば、サクラの話題は遠い昔のことで、私たちの今年の記憶からは一顧(いっこ)だにされなくなっています。ところが、登山を趣味にする私にとっては、7月と8月はサクラの花見が気になる季節となるのです。
アルプスなどの高山の気温は里よりも低く、一般的に標高が100メートル上がると気温は0.6度下がると言われます。例えば、伊那市役所の標高が632メートルですから、標高3,033メートルの仙丈ヶ岳山頂とはその差が約2,400メートルです。したがって計算上の気温差は14.4度となります。さらに高山帯では、北向き斜面、谷地形、残雪、降雨、地形などの要素によってさらに気温の較差が生じます。
中央アルプスの駒飼ノ池(こまかいのいけ)カールから濃ヶ池(のうがいけ)カールを経て、馬の背分岐までのトラバースルートを歩いているときに満開のサクラに出会いました。樹高が2メートルほどのサクラが数本咲いていました。7月31日のことでした。ザックをおろして一人で夏の花見です。また、南アルプスの北沢峠から仙丈ヶ岳へ登る途中、ちょうど大滝の頭(おおたきのかしら)の少し手前には、楚々(そそ)とした花をつけるサクラの木が登山道脇にあります。雪解けの遅かった2014年の南アルプスでは、8月11日に満開のサクラを楽しむことができました。藪沢(やぶさわ)ルートと大滝の頭から来るトラバースが交差するところの背丈の低いサクラです。雪渓(せっけい)の傍らにあるこのサクラは、雪解けとともに花を咲かせますので、開花はその年の雪渓の量に左右されます。8月中旬は山ではもう秋風が吹き始める頃です。花を咲かせて実をつけて落葉する忙しいサクラの一生です。
これら高山帯のサクラは、タカネザクラ(ミネザクラ)といいます。日本に自生するサクラの一種です。淡紅色(たんこうしょく)の花と若葉を同時につけるサクラです。伊那地方では里の早いサクラは3月下旬頃に開花しますから、高山帯のタカネザクラの8月を考えると、伊那のサクラの季節は5ヶ月にも及ぶことになります。
平成29年8月 白鳥 孝
中央アルプス 7月31日のサクラ
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